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2013年1月に東京ビジネスデザインアワードのテーマ賞を受賞後、同年8月には「マスキングカラー」の商品化が実現している。開発から約2年を経て、製造元の太洋塗料を知らなくても「マスキングカラー」は知っているというほど商品が一本立ちしつつある。
▲2013年、2014年にはインテリアライフスタイル展に出展
販売店舗との連携も
2013年1月のテーマ賞受賞後、同年6月には見本市「インテリアライフスタイル展」に完成品を展示。8月には店舗での販売に至っている。発売から約1年経った2014年の10月時点での累計販売数は約12,000本に達した。主な販路は東急ハンズやロフトといったDIY商品が充実する小売店。そのほかインターネットでの販売にも力を入れている。
「マスキングカラーは見た目も良いので扱いたいと言ってくださるショップが多いのですが、陳列したものの、使い方がわからなければ購買につながりません。その点、インターネットだと動画でデモンストレーションができるというのが強み」と太洋塗料の技術グループマネージャーの神山麻子氏は語る。
▲太洋塗料株式会社 技術グループマネージャー 神山麻子氏
こうしたツールとしての商品の場合、販売店舗と連携してデモンストレーションをするなど販促の仕方も考える必要がある。そのため「東急ハンズからは企画会議にも参加してもらいたいと声を掛けいただくようになり、売り方を一緒に工夫していきましょうと話が進んでいます」と神山氏は言う。
▲「JAPAN SHOP 2015」での展示
ブーメラン効果
業務用塗料を業者に卸してきた太洋塗料の社員にとって、小売店でマスキングカラーを購入してくれる多くの人たちの姿を見ることは、大きな励みとなっているという。さらにマスキングカラーの成功は既存事業への需要も増やしている。「マスキングカラーを見た方から『建機を保護するための塗料もつくってもらえないか』と問い合わせがあるんです。もともとわが社は業務用の塗料が本業なんですよ、と説明しています(笑)」(神山氏)。こうしたブーメラン効果から、さらに新たな商品展開が可能になった。これまでのホビー用のチューブ型の「マスキングカラー」からより広範囲を塗ることが可能なプロ仕様の「マスキングカラー・プロ」を開発、今年3月に開催された店舗空間の商材を扱う見本市「JAPAN SHOP 2015」で展示した。
▲プロ仕様の「マスキングカラー・プロ」
夢はまだまだ続く。「米国のようにDIY需要の大きい地域でマスキングカラーの商品力を試したい」と神山氏。その布石とすべく、2016年1月、パリのメゾン・エ・オブジェ出展を目指して今後は戦略を練っていく。「これまで私たちのほうから売り込むことはいっさい行ってこなかったんですが、多くのメディアが取り上げてくださったこともあって、海外からの引き合いも多い。このタイミングで自分たちから、自分たちの言葉で海外の方に説明する必要があると感じています」と語る。事業計画のシナリオを超えた道筋が見えつつある。(文/長谷川香苗、写真/西田香織)