新刊案内 ジェニス・カレーラス 著
『フィログラフィックス 哲学をデザインする』

『フィログラフィックス 哲学をデザインする』
ジェニス・カレーラス 著、関 未玲 訳、渡部千春 解題(フィルムアート社 1,500円+税)

絶対主義、一元論、プラグマティズム、形式主義、ヒューマニズム、相対主義、ユートピア……。これら95の難解な言葉を、シンプルな形と鮮やかな色で表現し、一冊にまとめたのが本書。

著者は、スペイン生まれのグラフィックデザイナーで、現在ロンドンを拠点に活動するジェニス・カレーラス。ソニー・ミュージックやバランタイン、赤十字などのクライアントを持つという。

東京造形大学准教授の渡部千春は、解説で「ジェニス・カレーラスの『フィログラフィックス』は、エル・リシツキーの『赤い楔で白を打て』の系譜に連なるもの。平面の幾何学的な色彩構成として同様というだけではなく、思想を伝える、ミニマルな表現として共通項が多いのです」と綴っている。

長い説明を要するような哲学の言葉が、わずか2、3行の文章と、ひじょうに抽象化された簡潔なグラフィックで表現されている点に驚かされる。本書刊行のために「キックスターター」を利用した著者が、目標を上回る4倍以上の額を集めたというのも、難解な哲学と明快なグラフィックの対比に多くの人が惹かれたからではないだろうか。

四六判変形、204ページ。