REPORT | ビジネス
2015.04.23 12:08
フランス中部の工業都市サンテティエンヌで4月12日まで開催されていたデザインビエンナーレ。ヤマハは前回の2013年に続き出展した(3月22日まで)。楽器をデザインするヤマハと移動機器をデザインするヤマハ発動機という2つの企業が互いの活動領域を交換して、ヤマハは移動体、ヤマハ発動機は楽器を提案するという取り組み「project AH A MAY」を紹介した。
デザインのフィールドは違っても、ヤマハの持つ共通の理念をもとに互いの活動を見直すための野心的な取り組みに、会場ではメディアや来場者たちから多くの注目を集めていた。ヤマハは2008年までミラノ国際家具見本市の期間、ミラノ市内で展示をしていた。しかし、ミラノからサンテティエンヌに展示の場を変えたのには理由がある。「ミラノでは膨大な数の展示を見るため、メディアの方たちが1つの展示に費やす時間が30秒というようなときもあるんです」とヤマハデザイン研究所の川田 学所長は残念そうに言う。これでは作品にこめられた想いが伝わらない。「私たちは広告代理店に任せることなく、デザイナー自らがデザインについて説明したいという想いで展示しています。サンテティエンヌビエンナーレは美術学校が始めたこともあり、今でもデザイン学校とのつながりが強い。毎回多くの教育関係者が授業の一環として学生と時間をかけて見て、正直な反応を聞かせてくれます」と続ける。
30秒で伝わることは広告に任せればいいが、それ以上の想いを伝えるためには、デザイナーの言葉以上のものはないのだろう。ミラノサローネとサンテティエンヌ国際デザインビエンナーレとでは見る側のペースも心の持ちようも違う。展示を通して何をしたいのか、明確にすることで展示の効果も高くなる。
会場では、座り込んで作品を模写する学生を見かけた。「iPhoneやカメラで撮るのは先生から禁止されているんです。手に覚えさせるためにもドローイングするのが課題です」とのこと。川田氏の言いたいことがわかった気がする。(写真・文/長谷川香苗)
「project AH A MAY」の展示作品の詳細はこちら。