vol.58
「Konost FF Camera」

スマートフォンとアプリの組み合わせによって、自在に加工された写真が簡単に得られる時代になった。その一方で、富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」がコンパクトデジカメを上回る人気を見せていることは、どこかで原点回帰的に「撮る」ことに専念できる製品を求める気持ちが、消費者のなかに芽生え始めているとも言える。

それを、アナログのフィルムカメラではなく、デジタル技術の追求のなかで実現しようとするプロジェクト(現在は、開発者向けのプロトタイプが完成した段階)が、コノストの「FFカメラ」(http://konost.com)だ。

FFはフルフレーム、つまり、35mmフィルムに準じた撮像エリアを意味し、それを2,000万画素のCMOSセンサーで実現する。レンズマウントはMマウントを採用し、対応するライカ系のレンズがそのまま使えるようになっている。

そうして画質を追求しながら、このカメラにはオートフォーカスも自動露出機能もない。ピントも絞りもシャッタースピードも、すべてマニュアル設定で行う仕組みだ。

しかも、距離計内蔵のクリアな光学ファインダーを覗いて撮影を行う、レンジファインダー方式を採用している。

そこまでシンプルにしながらも(あるいは、だからこそ)、コノストFFは、デジタル技術を応用した画期的な機構が組み込まれた。

通常のレンジファインダーカメラは、ボディの左右にある2つの窓から入った被写体の像を、プリズムなどの精密な光学系によって重ね合わせる、二重像合致の測距方式が採用されている。レンジファインダーを持つデジタルカメラは、エプソンの「R-D1シリーズ」や「ライカR」の最新シリーズのように先例があるものの、どれも測距に関してはアナログ機構に頼り、それが複雑さとコスト高につながっていた。

もちろん、そうした光学技術を否定するわけではなく、筆者もR-D1を愛用しているのだが、コノストでは、測距用の窓の1つに撮影用とは別の撮像素子を組み込み、そこからの像を電子的に光学式ファインダーの視野に重ね合わせるという機構を考案。プリズムとメカニカルパーツを省くことで、製造コストをかなり圧縮できた模様だ(価格は未定)。

もちろん、フルフレームの撮像素子を使う以上、あるレベル以下の価格にはならず、ライカ系のレンズもかなり値が張るので、トータルで考えれば決して安い買い物とはならないだろう。それでも、この製品の開発者の着想の妙には驚かされるのである。