先日、韓国ソウルを訪れる機会があり、2014年春にオープンしたDDPこと東大門デザインプラザを見てくることができた。
当初の予定から2年近く遅れての竣工だったと思うが、それまでもソウルに行くたびに東大門に出向くものの、なかなか全体像が見えずに完成を待っていたのである。
ザハ・ハディドのデザインによるDDPは、45,133枚の曲面状のアルミパネルで覆われ、工期が延びても致し方ないようなフォルムと規模を誇る。
実は筆者の実家のある東京・千駄ヶ谷では、国立競技場の建て替えに絡み、ハディドの設計を巡ってさまざまな議論が起こった。DDPを見るに、おそらくフルスケールの計画をそのまま実行しない限りハディドの持ち味は生かせないのではと思う半面、2020年のオリンピックに間に合わせるためには、予算はともかく工期の点で規模縮小もやむを得ないかとも感じたのだった。
と、ここまで引っ張ったが、今回のメインテーマはDDPではない。採り上げたいのは、その完成以降、リニューアルが進んでいる東大門地区に新たにオープンした「REMICONE」というアイスクリームショップと、そのユニークなスペシャルメニューのデザインだ。
もう慣れたものの、冬のソウルで驚くのは、カフェやレストランに入っても、コートを脱がず、マフラーも巻いたままでコーヒーや食事を楽しむ人が目立つことと、パッピンスと呼ばれるかき氷やアイスクリームが普通に売られていることにある。前者は、再び外に出たときにも寒く感じにくいという理由らしく、後者は、建物内が暖かければ夏でなくても美味しくいただけるからのようだ。
REMICONEの第1号店は、カロスキルというソウルの代官山のようなところの路面店であり、東大門のショップは2号店でファッションビル内にあるが、内外装のデザインはほぼ同じ。アメリカのファストフードの移動店舗で使われるバンをイメージしたもので、ダミーの配管がアクセントになっている。
また、レギュラーメニューもカラフルで楽しげだが、いちばんの話題となっているTHUNDER BOMBというスペシャルメニューが、アイデアに溢れていた。アイスクリームを雪、その上に重ねた綿あめを雷雲に見立てて、その両方にポップロックキャンディー(炭酸ガスを閉じ込めてあり、口の中で弾ける、いわゆるパチパチキャンディー)をちりばめてある。
日本でも明治製菓が「わたパチ」という名称で、綿あめとパチパチキャンディーを組み合わせた袋菓子を販売しているので、そういう製品がヒントになった可能性はあるが、アイスと綿あめのコンビネーションが面白く、綿あめのカラーがグレーなのも視覚的なインパクトが大きい。
フードやデザートのデザインも、3Dプリンタなどの登場で、これから大きく変わっていきそうだが、意外な食材の組み合わせというレシピにも、まだまだ可能性が残されているようだ。