第4回
「SC の可能性」

昨年の10月、木更津に新しくイオンモールがオープンしました。イオンモールは郊外型SC(ショッピングセンター)として、全国で数百店舗以上を展開していますが、それぞれ独自の地域に密着したスタイルを築いているようです。今回は、木更津イオンモールにオープンした「HUNT de odekake 」 を紹介します。

「HUNT de odekake 」は中古車販売会社のガリバーが運営する施設。「おでかけのはじまり。」をコンセプトにしたライフスタイルストアで、東急ハンズの TOKYU HANDS TRUCK MARKET やシングルオリジンコーヒーで人気のNOZY COFFEE などが入り、もちろんガリバーがプロデュースするこだわりのクルマたちがセンスよいレイアウトで一体化しています。クルマを買いにいく場所というよりは、まるで友だちや家族と一緒に訪れたい近所のショップのような感覚。「HUNT」は木更津が位置する房総半島の“半島” ともかけていて、房総を満喫するための「モノ」「コト」「ヒト」がここにあるというコンセプト。ここに来ればドライブのための素材や情報がすべて入手でき、気に入ったクルマにも試乗できるという提案です。

中古車販売というと、屋外にクルマが整然と並んでいるという感じですが、ここはSC内。しかし、とても開放感があり、ゆっくりと時間が流れ、リラックスできるホスピタリティがあります。

子供たちが思い切り遊べるコーナーもあり、とてもオープンで自然とショップが繋がっているような雰囲気。 明るさから言うと、SC特有の高照度な設定ではなく、天井は高くスケルトンでコンクリートむき出しなガレージのイメージ。反射は決して良くなく、ピンポイントでインテリアやディスプレイを照射していているため、どこか暗めで陰影がくっきりと出ているようにも見えて、大人な空間です。しかし、なぜか何時間いても居心地が良い。子供たちの笑い声やはしゃぐ姿、友人たちの会話、すべてが何気ない自然な風景となって溶け込んでいます。

NOZY COFFEEでコーヒーを買い、ソファに座ってHUNT内を眺めていたら、偶然NOZY COFFEEの代表、能城政隆さんが現れ、お話をうかがうことができました。能城さんが言うには、「SCはすでに人々の日常であり、休日に張り切って行くところではない。野菜やお菓子、洋服から日用品を買い、ご飯を食べて、イベントがあれば参加する。そこは昔からの商店街と同じ。そんな日常の中にこそ、僕たちのようなコーヒーシッョプが気取らずに存在していることがうれしい」と。さらに、「これからはこのようなSCの中にこそ、デザインシッョプなどが出店して、“日常” を生活者と一緒に過ごすことが望まれるのではないか」とも。このお話を聞いて、今回この施設を設計した SUPPOSE DESIGN OFFICE .,Ltd. の谷尻 誠さん吉田愛さんの想いが理解できたような気がしました。(文/谷田宏江、ライティングエディター)

「HUNT de odekake 」
設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE .,Ltd. 谷尻 誠、 吉田 愛
照明 : マックスレイ
写真:矢野紀行