現在のBMWブランドのミニとは異なる、英国車だったオリジナルのミニを設計したアレック・イシゴニスは、車体の小型化のために、エンジンを横置きし、その下にトランスミッション(ギアボックス)を配置するという革新的なレイアウトを考え出した。
この構造によって、前輪駆動車のミニは、既存のエンジンを用いながらもエンジンルームの前後長を大幅に短くすることに成功したのである。
世界有数の工具メーカーとして知られるブラック・アンド・デッカーが、あえて日本で世界先行発売を開始したスティック型のサイクロンクリーナーの「オーラ」のデザインを知ったとき、思わず頭に浮かんだのが、そのイシゴニス方式のエンジンレイアウトだった。
このクリーナーのサイクロン部は、まさにユニットを横置きし、その下方にダストケースを配することでコンパクト化を実現している。このアイデアが、なぜ英国のダイソンではなく、米国のブラック・アンド・デッカーから生まれたのかと思ったが、資料を見ると「UKデザイン」と書かれていた。となると、ミニのエンジンレイアウトが実際に何らかのヒントになったことも考えられそうだ。
他にも、スティック型の状態からコアユニットを取り外すとハンディタイプとして使用できたり、ノズルの付け根にホースが内蔵されていて、それを伸ばせば、片手で本体を持ちながら、もう片方の手で軽く吸引部を操れるなど、カラクリ好きのブラック・アンド・デッカーらしいまとめられ方がなされている。スティック状態で自立するのも、ダイソン製品にはない特長と言える。
オーラは、日本やヨーロッパにおいてフローリングの床材が増えていることから、そこでのメインユースを念頭に開発され、充電式バッテリーによる駆動時間と吸引力のバランスをとることで最長25分の連続利用が可能となっている。オーラという製品名自体、「最適化された駆動時間と空気の流れ(OPTIMIZED RUNTIME + AIRFLOW)」の頭文字から名付けられたものだ。
基本となるサイクロンのメカニズムは同じでも、先行他社と全く異なるデザインアプローチでクリーナーをつくったところに、ブラック・アンド・デッカーのユニークさが光っている。