価値を高めるための
「分別」と
「解体」の違いを解釈する

ナカダイは9月が本決算で、10月1日に60期が始まります。法人としてスタートして60周年。還暦です。といっても、特に何の記念式典もやりませんが。60年間、鉄・非鉄のスクラップ業、そして総合リサイクル業としてひたすら愚直なまでに分別、解体をし続けたなと思います。創業以来、顧客や扱うモノは変化していますが、変わらない行為は、価値を高めるための“分別・解体”です。ナカダイのDNAはここにあります。行為は変わらなくても、行為自体を見つめ直し、その意味を解釈すること。

先日ゲストスピーカーとして参加した、「Re:bound 境界を書き換える」という合宿を紹介します。今までの枠組みにとらわれずに、新しい価値やアイデアを生むための考え方やプロセスをディスカッションしようという集まりです。私はそう解釈しました。なんとなく漠然としつつ、これからの時代に必要かも……と思わせる良い感じのお題です。

思い返せば、私がこのブログを書くようになったのも、AXISの「デザインのブレイクスルー」と題した特集でお世話になったのがきっかけ。既存の枠を飛び越えて……というのは、当初から意識した重要なキーワードだけに、そう見られたことは本当にありがたく、うれしいことです。2年前、ちょうど同じ時期に訪れた越後妻有の三省ハウスという廃校をリノベーションした場所での合宿でした。

さまざまな属性の方たちが参加していましたが、私のグループは「ネオアマチュアの時代」と称し、プロでもアマチュアでもない、“境界を越えた人”についてのディスカッション。そもそも、そういう人をどう定義するのか? ネオアマチュアって言葉は正確な表現なのか?というように、「ネオアマチュア」という言葉は抽象的なのに、「境界を越えた人」という内容は具体的に想像できる、妙な間合いでのディスカッションでした。

内容を紹介すると長くなるので省略しますが、自分の行動を丁寧に解釈することの大切さを改めて感じました。そのときどきで何かを基準に、仕事でもプライベートでも判断をしていますが、それをしっかり振り返ることで、確かな経験に変え、他の人と共有することができます。一緒にゲストスピーカーで参加していた「産学官リデザイン」のセッションを担当された塩瀬隆之氏が、「人間は、経験を共有できる動物だ」とおっしゃってました。そのとおり、本当に大事です。

ただ、これからの時代に必要な伝えるべき・共有するべき経験とは、その思考やプロセスであり、技術的な仕組みやノウハウではないとも感じます。そして、その蓄積こそ、既存の枠を飛び越え、新しい価値を発見するきっかけになるのではと思います。新しい価値を創造できるかは、さらに先の話です。おそらく、この答えが出るのは数年先だと思います。今やっていることが正解かもわかりません。結局、自分に対して真摯に向き合い、自分の想いにうそをつかないということが大事なのかもしれません。

話は変わりますが、新しいナカダイの場内図です。あらためて見てみると、なかなか刺激的な工場です(デザインの力にかなり頼ってはいますが)。ここに載っている機械類は、リサイクルを行うためには欠かせない機械ばかりです。普段、皆さんがあまり耳にしない「蛍光灯破砕機」もあります。おかげさまで、ナカダイの事業もある程度順調に進み、リサイクルに関する問い合わせも増え、工場内の改修、増築を施し、作業性と品質の向上を図っています。それに伴い、モノ:ファクトリーも引越ししました。

リサイクルを支えるこの現場を充実させることでのハードの強さと、それを運用する思考とプロセスというソフトを融合させることが、今期のナカダイの最重要課題だと思っています。還暦のナカダイ、今期も社員一同、全力でがんばります。(文/中台澄之)

この連載は株式会社ナカダイ前橋支店支店長・中台澄之さんに産業廃棄物に関するさまざまな話題を提供していただきます。