商品化への道のり
「新興グランド社」【後編】

点字印刷がランプシェードに変身!

新興グランド社の疑似ラインストーン印刷技術に対して、ルームアクセサリー製品の提案をしたのはデザイナーの津留 礼子氏と津留 敬文氏によるユニット、MEDIUM。「ラインストーン調の印刷はきれいですが、目を凝らして見るとラインストーンでないことは分かってしまいます。ならば、ちょっと離れたところから見るランプシェードのようなインテリアアイテムで疑似ラインストーンのプチゴージャスさを生かせないかと考えました」と津留 礼子氏は説明する。提案したのは「twinkle piece」。疑似ラインストーン印刷を装飾的にあしらったピースをパズルのように平面的、立体的につなぎ合わせることでインテリアアイテムを作ることができるキットだ。クラフト好きな若い女性の心を捉えそうなキラキラ感がいい。ポイントは「本物のラインストーンであれば1つ1つ手で貼っていくもの。それに対して印刷は量産可能」ということ。疑似ラインストーン印刷であればふんだん豪華に付けても価格は変わらない。それでいて新興グランド社にとって「twinkle piece」のデザインに合わせたスクリーン版と抜き型を作れば、新たな設備投資、技術開発を行うことなく従来の工場の体制のまま生産可能なのである。このことは宮坂社長が「twinkle piece」を新たなブランドとして採用するうえで重要な決め手となった。

▲「twinkle piece」では箔押しだけで八角形の形が宝石のように光を反射するように箔の切り込みのデザインを検討した

東京ビジネスデザインアワード受賞後、スムーズに製品化に至ったように聞こえるが、販路戦略などの面ではアワードの審査委員からのアドバイスが有用だったようだ。「審査委員のひとりで知的財産権分野のコンサルタント・弁理士である日高 一樹さんからは戦略的な知財権の取得方法について細かくアドバイスをもらいました」と津留 礼子氏はいう。また、販路開拓の面でどこに照準を合わせるかについては、審査委員のひとりでバイヤーの山田 遊氏に相談し、具体的なプランを組み立てていった。「アワードで企業とのマッチングが決まったら、それで終わりではなくて、アワード後も継続的に審査委員がコンサルタントのように相談にのってくれるので助かっています」と津留 礼子氏。「twinkle piece」は7月、世界に向けて日本のデザインを発信する役割をもつ見本市Design Tokyoに出展し、お披露目する。

▲フロアライト

▲リース

▲モビール(青)

宮坂社長は「他の経営者の知り合いにも、自社の技術に誇りをもつのはいいけれどあまり頑なになるんじゃなくて、クリエイターと一緒に何か作るといいよと勧めているんです」とマッチング運動を広めている様子。企業とデザイナーの双方が納得のいく製品ができあがったようで、7月の見本市での展示も楽しみだ。(取材・文/ 長谷川香苗)

▲左から新興グランド社 宮坂 一朗社長 デザイナーの津留 礼子氏 津留 敬文氏(MEDIUM)

Photo by Kaori Nishida

7月9日~7月11日 「第5回 DESIGN TOKYO – 東京デザイン製品展 – 」にて展示・発表
http://www.designtokyo.jp

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