つい最近、2つの清涼飲料会社が、自社製品のプロモーションの一環として、ボトルキャップに着目するキャンペーンを発表した。1社はザ コカ・コーラ カンパニー、もう1社はネスレである。
ザ コカ・コーラ カンパニーのほうは、看板飲料であるコカ・コーラのアジアでの消費を高めるべく、 “Coca-Cola 2nd Lives” の名の下に、まずベトナムで4万個の特製ボトルキャップを配布する予定だ。
それらは機能性キャップともいうべきもので、コカ・コーラのボトルに装着すると、ウォータースプレーガンや液体ソープディスペンサー、シャボン玉液の容器、赤ちゃん用のガラガラ、筋力トレーニング用のバーベル、各種調味料入れなど、16種の実用品やオモチャなどへとリユースできる。
メーカーの事情としては、健康志向から自然飲料やダイエット飲料の消費に傾きがちな先進国では新商品の市場投入に力を入れつつ、依然としてストレートな甘味飲料に人気のあるアジア諸国では主力製品の市場拡大に力を入れたいという思惑があるだろう。そうしたリユースボトルが、飲食店や公共の場所で使われれば、ブランドロゴとカラーの露出を図ることができるわけだ(洗剤やシャボン液などを入れる場合には、誤飲を防ぐためにラベルを剥がすようにとの注意も促している)。
しかし、一方ではリサイクルされずに放置されてしまうペットボトルの回収を促し、環境保全に貢献する側面もある。もちろん、別メーカーの製品でも適合するPETボトルが多く、流用されることは計算済みと思われるが、それも含めて空きボトルによる環境や景観の破壊が少しでも減るのならば、デザインによる問題解決として意味のあるキャンペーンといえよう。
もう1つのネスレの試みは、同グループが商標権を持つミネラルウォーターのヴィッテルに関する “Vittel Refresh Cap”だ。
これは、1日あたりコップ8杯分の水分を摂取することが望ましいという観点から、キャップにゼンマイ式のタイマーを内蔵し、1時間に1回、フラッグが立つことで、水を飲むことを促すというもの。ひと口かふた口、水を飲んでキャップを締める動作により、自然にゼンマイが巻かれてタイマーがリセットされるので、1時間後には再び知らせてくれるというところが巧みにできている。
こちらは社会実験に近く、実際にこうした仕掛けがあると人々の水分補給の行動がどうなるかを調べることが目的だったが、実際に水分摂取量が増えるという結果が得られたという。
このリフレッシュキャップも他のボトルに流用可能と思われるが、人々に水を飲む習慣を改めて意識させるという目的は十分に達せられ、これを思いついた広告代理店オジルビー・パリスの優秀性を世に知らしめるという副次的効果もかなりあったに違いない。
大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。著書は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)、『iBooks Author 制作ハンドブック』(共著、インプレスジャパン)など。最新刊に『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)がある。