REPORT | ビジネス
2014.04.18 23:01
ナイキは、新しい「KOBE9 Elite Low HTM sneaker」の世界初公開の場にミラノサローネを選び、市内中心部に建つ歴史的建造物、クリッツエ宮の中庭でダイナミックなドームを設置してのワールドプレミアを行った。
展示の主役は、9つのガラスケースに入った「KOBE9 Elite Low HTM sneaker」。デザイナーの藤原ヒロシ(H)とNIKEイノベーションリーダーのTinker Hatfield(T)、NIKEのCEO Mark Peter(M)とのコラボーレションから生まれた「HTMスニーカー」。その特徴は裁断した布を縫い合わせていくのではなく、伸縮性に富む超軽量ポリエステル糸から直接、スニーカーを編み上げていく「Flyknit」という技術にある。1枚布のシームレスなスニーカーは最小限の素材で軽量でありながらも、足の動きに合わせてソックスのように伸び縮みし、アスリートのパフォーマンスを最大限に引き出すように設計されている。
この「KOBE9 Elite Low HTM sneaker」の革新性を空間で表現したのが、ヘリウムガスでパラシュートのように広がった風船型のドームだ。手がけたのは台湾を拠点にするエンジニアアーキテクト、アーサー・ファン。地面に置かれた9つのガラスケースからスパイダーウェブのようにポリエステル糸が放たれ、体積96立方メートルのドームが空中で揺れ動くのに合わせて伸縮するとともに、ドームが移動していかないように9方向からつなぎ止めている。つまり、9つのガラスケースが錨の役目を果たしている。「Flyknit」技術のエッセンスが表現されたインスタレーションと言える。このドームは、柱のような圧縮部材を使うことなく成り立った初めての構造体という点でも革新的だ。
アーサー・ファンによればドームの構造は、「レオナルド・ダ・ヴィンチのパラシュートとアレクサンダー・ベルの四面体凧の空気力学の原理にヒントを得た」と言う。また、ドームは終了後、空気を抜いて畳めばスーツケース5つに収納でき、モビリティにも優れている。(文/長谷川香苗)