木製自転車というと、その素材の特異性から材質ばかりが気になりがちですが、本来自転車は柔らかさが命です。それは空気を入れるタイヤが衝撃を吸収するために発明されたことをみても明らかです。レース機材として多くの自転車を製作してきたなかで、自転車が本来有していなければならない大切な「柔らかさ」を「木」という素材で実現しました。鉄パイプやカーボン繊維を使用しても、人間が操縦する移動ツールとして、弱さと強さのバランスがとれたデザインでなくてはならないのです。

今回はそのしなやかさを表現できる素材として木材を使用し、最新の素材であるカーボン繊維で安全性と生産性を補いました。見た目のデザインからは、乗ってみたくなる温かみのある製品で、「ひと」に近いツールとしての自転車を表現できたと思います。

今後も速さを優先するレース用自転車ではなく、素材にこだわらず乗ってみたくなる、眺めたくなるしなやかな自転車の開発を目指します。（文／Kinopio Crafts&Bikes 安田マサテル）

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