PVCデザインアワード 2013
「ソフトPVCで日本の力を試す」

昨年で3回目となる「PVCデザインアワード 2013」の結果発表と受賞作品展が去る10月末から11月にかけて、東京、名古屋、大阪で行われた。今回は「ソフトPVCで日本の力をためす」というテーマの下、ソフトPVC(軟質ポリ塩化ビニル)という素材の新たな価値を見出し、市場や世界に挑戦するデザイン提案と製品(販売後5年以内)を募集。

大賞「デコバッグ」(石田真紀)

「過去2回はレベルの高い作品が集まりましたが、PVCの機能や加工技術への認知度がまだまだ低いというのが正直な印象。そこで今回はある程度素材の特性を理解したうえで応募してもらえるように準備しました」という主催者の言葉どおり、事前に各地で応募予定者向けに説明会を開催し、ソフトPVCの特性を紹介する機会を持った。結果、応募点数は327点に上り、外観の表現に止まらない、加工方法や機能に踏み込んだ作品の比率が大幅に高まった。

大賞「エアキン」(マインドクリエイトジャパン)

大賞に選ばれたのは2点。「デコバッグ」は緩衝機能付きバッグで、ソフトPVCシートを凹凸加工する真空成形を可能にした技術と、外側と内側に重ねたソフトPVC特有の透ける質感などの表現が高く評価された。サイズや形状のバリエーションによる多様な用途展開が期待される。
同じく大賞の「エアキン」は、人体の形をリアルに表現した空気で膨らませるマネキン。2011年の発売以来、軽くて持ち運びや収納が容易で、置くだけでなく宙づりにするなど、空間を生かした展示が可能なことから、ファッション業界を中心に広く支持されている。既存の技術を複合的に使用した従来にない加工・成形技術と、高いクオリティが評価された。

優秀賞「セル」(内田亮太)
2枚のソフトPVCシートを溶着してできたセル構造内の空気がクッション機能を果たすとともに、ソフトPVCならではの透明感や重なるカラーが美しい効果を出している。

本アワードの特徴の1つは、1次審査で選ばれたデザイン提案をPVCの製造加工会社の協力によって試作し、最終審査に臨むという点。試作品の優劣が審査にも影響する。今年も従来同様、試作段階で技術上の困難を伴う作品がいくつもあったが、得意分野の異なる数社の連携によってコンセプト以上のモデルに仕上げた例もあり、審査員たちを驚かせた。「新しいことにチャレンジしなければ、業界の今後の展開もあり得ない」という主催者の言葉どおり、業界を上げて、本アワードを盛り上げていこうという姿勢が印象的だった。

優秀賞「エアーセル」
(三澤建人・西山恵太・松見咲子)
六角形のソフトPVC製クッションに空気を入れて膨らまし、そのままソフトPVCの自己粘着性によりガラス面に張りつけるガラス衝突防止パッド。光の透過によって素材の美しさが際立つ点も評価された。

PVCデザインアワードのホームページはこちら