「2013 Graphic Grand Prix by Yamaha」受賞結果と授賞式

平面における表現の可能性を探るグラフィックコンテスト「2013 Graphic Grand Prix by Yamaha」。これは「感動」をキーワードにモノづくりを行っているヤマハとヤマハ発動機が「今の時代の感動」を表現するグラフィック作品を対象に開催しているもの。2回目となる今年、「いいの?」「いいね!」というテーマに769の作品が寄せられた。その中から審査員長の日比野克彦氏、スプツニ子氏、そしてヤマハ2社のデザイン部門のメンバーからなる審査員が一次審査で8作品に絞り込み、選ばれた8作品を10月26日から11月4日まで、東京デザイナーズウィークの会場で展示した。「今の時代の感動」を考える上で、一般の来場者による人気度「いいね!」は重要。会場、そして公式ウェブサイト、Facebookページでの一般による投票を合わせて、10月30日には最終審査会および表彰式が行われた。

日々Facebookやtumblr.に上げられる近況に対して示す「いいね!」や「シェア」は、自分がいいと思ったものを誰かと共有したいという気持ちから生まれるアクション。こうしたアクションの中に「今の時代の感動」がありそうだ、ということで決まった今年のテーマ。審査員のひとりであるスプツニ子氏が「これからの時代の感動とは、グラフィックスキルの高さ以上に、人の共感を誘うものにあると思う」とコメントしたように、一次審査で選ばれた8作品には特別高度な技術を必要とするものは多くなかった。

グランプリ、オーディエンス賞「行ってきます」岡部 望

むしろ、観た人がどれだけ自分のことのように捉え、作品に共感(Empathy)できるかであったように思える。それを物語るように、グランプリに選ばれたのは会社員の岡部望さんの作品「行ってきます」。これは岡部さんが4年間、毎朝仕事に行く前に携帯電話で撮りためてきた家族の写真をすべて並べて1枚にしたものだ。アーティストでも、グラフィックデザイン関係の仕事をしているわけでもない岡部さんの作品はやろうと思えば誰でもできることであり、高度で最新の技術を必要とするわけではない。それでも、日によっては緊張気味の表情であったり、ウキウキの顔であったり、そこには家族にだから見せる表情が写っているのだ。

グランプリ、オーディエンス賞を受賞した岡部 望さん。

多くの人が「そのアイデアいい! 明日から自分もやってみたい!」と共感を抱いたこの作品はグランプリ以外にも、一般の人たちによる投票でも最も得票数が多く、オーディエンス賞も受賞。授賞式でヤマハの中田卓也社長が「オーディエンスとの対話がもっともできていた作品」と語っていたが、グラフィックの役割はそこにあるのだと改めて感じたコンペだった。(文/長谷川香苗)

日比野克彦賞「こんな雲いかがですか?」松岡啓祐

スプツニ子賞「マイファッション」森 拓馬

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