INTERVIEW | インテリア
2013.11.15 10:24
11月27日(水)から大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で始まる「LIVING & DESIGN」。多彩な出展陣のなかには、地域の資源を有効活用し新しい産業やサービスの創造を目指す第三セクターの姿も。LIVING & DESIGNの見所をいち早く紹介するシリーズの3回目は、そんな企業の1つ、岡山県西粟倉村が出資する西粟倉・森の学校を取り上げます。
林業振興のため、村産材を活用した商品の製販会社として2009年に設立された森の学校。今では林業の6次産業化のモデルケースとして全国からその活動が注目を集めています。従来、個人への販売(BtoC)を主力としてきましたが、「新たに開発した2つの商品で企業間取引(BtoB)分野の拡充を目指したい」と、木材コーディネーターとして森の学校の活動に関わる山崎正夫(シェアウッズ代表)さんは初出展に向けた豊富を語ってくれました。
BtoB市場への期待から参加を決断
西粟倉・森の学校は、地元の森林資源を生かそうと、村が森林を借り、間伐したヒノキやスギを用いて家具や床材、文具などに加工・販売しています。50年前に木を植えた人たちの想いを次の50年に受け継いでいくという壮大な構想のもと展開しているプロジェクトです。
▲古い木造校舎を利用し、村産材を生かした商品開発に取り組んでいる西粟倉・森の学校。地元で製材したヒノキが来訪者を迎えてくれます。気に入った木材をこの場で買うこともできます。
加工品の主な供給先がこれまで一般生活者を対象としていたことから、見本市の参加はBtoCを意識したものが多かったのですが、事業拡大のためにもスケールメリットが期待できるBtoB市場に打って出たいと考え、LIVING & DESIGNへの出展を決断しました。訴求の対象が個人から企業に変わることで、アピールするラインナップも変えています。特に力を入れているのが、熱が加わっても収縮しない床暖房に対応した無垢のヒノキ材と遮音性を高めた無垢のフローリング材の2つ。潜在需要が大きいにもかかわらず、これまで選択肢がほとんどないとされてきた商材です。
本物の良さ、質感を知ることで、着飾る楽しみを
LIVING & DESIGNは、一貫して「住まいと暮らしのリノベーション」というテーマを謳っていますが、市場の動向を見たときに、リノベーションやリフォームのマーケットは今後需要の拡大が期待できます。そうしたなか、集合住宅のリフォームではこれまで、防音の問題から無垢のフローリングを用いることが難しかった。今回の開発では、長年遮音シートを研究してきたメーカーとコラボレーションすることで、管理組合が規定しているL45と呼ばれる遮音性能の規格をクリアすることができました。この製品であればマンションの管理組合に対しても無垢材を使ったリフォームが提案できますし、本物の質感を求めるプロのニーズに応えられると考えています。
▲BtoBを意識した商材として新たに開発された、熱が加わっても収縮しない床暖房向けの無垢板パネルは、今回の展示の目玉の1つ。写真は耐熱試験を行っている際のものです。
「ドレス・アップ―暮らしを着飾る楽しみ―」というサブテーマが今年のLIVING & DESIGNには設定されていますが、木という素材で考えてみると“本物を知る”ことがテーマにつながってくるのかもしれません。こだわりを持った部分にこそ、本物の材料を使う。そして本物の価値を知れば、人は必ず別のところにも同様のクオリティを求めるようになります。フェイクがきかないマテリアルだからこそ、本物の良さ、質感を感じてもらいたい。
▲自前の木材加工工場で出番を待つ、無垢のフローリング材(加工前)。遮音シートの下地を接着した状態で、フローリングパネルとして出荷されていきます。
刺激し合える出展者同士のつながり
前職のときを含め、私は2009年から毎年LIVING & DESIGNを見続けてきました。そこで常に感じてきたのは、出展者同士のつながりや雰囲気がすごく良いということです。1つのキーワードを通じて出展者同士が親密になり、一緒になにかをやろう!というムードがすぐに生まれる。その結び付きをきっかけに、今までとは違って視点でものづくりが実践できたり、新しい客層の開拓が期待できるのが、他の見本市にはないユニークな点でしょう。
▲木材とニーズやアイデアをつなぐシェアウッズの仕組みを活用すれば、こんな演出も可能。乾燥させた生木を縦目方向にスライスし、ケータリングフードのトレーとして活用した例。
実はこうしたマッチングを、木材とニーズ、木材と人というかたちでつなげていくシェアウッズという活動も、今回の出展でアピールしたい点です。山の人からすればキズがあって売れないと思えるような木でも、デザイナーのアイデア次第で価値が吹き込まれることがあります。山で眠っている木を素材として並べ、これを生かして美味しい料理をつくってください!と訴える。もちろん、単に素材を並べるだけでなく、私たちの山には今このような丸太があって、こんなふうにスライスして使ったら面白いのではという提案もします。互いにアイデアを交換しながら刺激し合えるような関係がつくれればいいですね。
ストーリーのあるものづくりを伝える
西粟倉村の木は、木目が詰まった良質な木であることが特徴です。その管理や、山から木を下ろす作業、製材までを村の直下型事業として森の学校が担っています。商品開発も販売もすべて自前で中間業者が全く入らない。そうしたワンストップビジネスの利点は当然価格に還元され、経済的にも魅力と感じてもらえるのではないでしょうか。
この村でヒノキに絞って作家活動をしている大島正幸(木工房ようび)さんの家具も紹介する予定です。家具の世界では、広葉樹などの堅い木でつくるのが一般的とされていますが、彼は伝統的な木組みの技術を駆使しながら、村産材の利用にこだわって家具をつくっています。加工や組み立て技術の工夫次第で、広葉樹にも劣らない強度を備えた家具ができることを知ってほしい。大島さんの家具もそうですが、私たちが展示するモノの背景には50年前に植林された人工林を、村の財産として生かすという確固としたストーリーがあります。そのストーリーを少しでも感じてもらえたら嬉しいですね。(文/編集部・上條昌宏)
▲展示ブースには、木の文化に親しむことができるこうした小物類も並びます。
LIVING & DESIGN 2013
会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪/大阪市北区中之島 5-3-51)
会期:2013年11月27日(水)~11月29日(金) 10:00~18:00(最終日は17:00まで)
入場料:1,000円(招待状持参者、事前登録者無料) 事前登録はこちら
主催:LIVING & DESIGN 実行委員会
西粟倉・森の学校の展示ブースは、正面エントランスから入り、カフェスペースを抜けた突き当たり左手になります。