NEWS | 建築
2013.10.12 14:54
『阿佐ヶ谷住宅 THE ASAGAYA RESIDENCE』えんぞう 著
(リブロアルテ 980円)
昭和33(1958)年に竣工した東京・杉並区の集合住宅。前川國男の設計による2階建てのテラスハウスや緑豊かな配置計画など、郊外型住宅地の理想として長く人々に親しまれたが、2010年に老朽化や居住者の高齢化を理由に建て替えが決まった。
本書は、InstagramersJapanの代表も務めるiPhone写真家えんぞうによる阿佐ヶ谷住宅の写真集。すべてiPhone 5のカメラで撮影しており、クラウドファンディングによって書籍化を実現させたという点でも、他に類を見ない一冊だ。
収録された写真は、住民の退去から解体工事着工までの数カ月間の数千枚から選ばれているが、もともとえんぞうは散歩コースとしてこの地を訪れていたという。「阿佐ヶ谷住宅を訪れると日常の窮屈さから開放される」と語り、それはたぶん阿佐ヶ谷住宅に行ったことのある多くの人に共通する思いではないだろうか。懐かしさというだけでなく、長い年月をかけて築かれた、伸びやかな暮らしの風景が広がっていた。
なお、建て替え完了までほぼ毎日写真を投稿するブログ「阿佐ヶ谷住宅を遺そう。」も継続中だ。本書は、解体が始まった今、阿佐ヶ谷住宅を記憶に残すための貴重な一冊だ。
なお、収蔵作品の一部は2013年の「ベルリンモバイルフォトグラフィーアワード」でグランプリを受賞。210×148㎜、ソフトカバー、64ページ。