vol.37 ゲオリーノ
「メルトダウン」ゲーム

テレビゲームやコンピュータゲームが全盛の今でも、あるいは、今だからこそ、ボードゲームのデザイナーたちは、実体があることの面白さや意義を見つけ出そうとする。

ドイツの子供向け科学雑誌、ゲオリーノが子供たちに地球温暖化の影響を実感してもらえるように開発したゲーム「メルトダウン」は、まさにボードゲームだからこそ可能な特徴を盛り込み、この問題に対する意識を高めるための工夫がなされている。

ゲーム内容は、通り道の氷が溶ける前にシロクマの親子を安全な場所まで導くというもの。しかし、普通のボードゲームと異なるのは、その盤面が本物の氷でできており、実際に時間の経過とともに溶けてなくなってしまうという点だ。

実は、パッケージ内に専用の製氷皿が入っていて、そこに水を入れて冷蔵庫の冷凍室で冷やしておく。そして、スポンジ製のベースの上で引っ切り返すとゲームのシロクマたちが暮らす小さな氷の世界が出現し、融解へのカウントダウンが始まるのである。

この基本アイデアも優れているが、氷を思わせるケースやシロクマの造形、ダイスのグラフィックスに至るまで良く考えられており、教材臭さは感じられない。

確かに、季節や室温がゲーム時間に影響してしまうわけだが、例えば、冬に暖房が効き過ぎているときなど、子供たちが自ら温度を適切に保とうとするような自覚を促す効果も期待しているのではないだろうか。




大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。著書は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)、『iBooks Author 制作ハンドブック』(共著、インプレスジャパン)など。最新刊に『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)がある。