「Fresh TAIWAN 2013—See the Difference」
台湾の若手デザイナー8組がインテリア ライフスタイルに出展

6月5日〜7日、東京ビッグサイトで開催された「インテリア ライフスタイル」展に台湾の若手デザイナーを紹介する「Fresh TAIWAN」プロジェクトのブースが登場した。

同プロジェクトを運営するのは、台湾におけるクリエイティブ産業の発展促進や人材育成を支援する財団法人台湾デザインセンター。日本でいう日本デザイン振興会にあたる国家級のデザイン専門機関である。これまでにも同センターはメゾン・エ・オブジェやロンドンデザインウィークなどでも「Fresh TAIWAN」のイベントを開催し、台湾デザイナーの海外進出を後押ししてきた。

初出展となる「インテリア ライフスタイル」展で、今回紹介されたのは国際的なデザイン賞を受賞したり、欧州の家具メーカーなどと協働して注目されるデザイナーやデザイン企業8組だ。

▲「Fresh TAIWAN」のブース。13年は世界7カ所の国際見本市に出展する予定だ。

ハン・ギャラリー(Han Gallery)は、ドローグの創始者ハイス・バッカーと共同設立したデザインオフィスで、台湾の伝統技術や文化をインスピレーション源として台湾だけでなく世界各国のデザイナーを招いて協働している。

本展では日本の「nendo」とコラボレーションしたアームチェアとスツールなどを展示。台湾の伝統的な竹細工をモチーフに、ステンレスを用いて竹のしなやかな強さを表現した「BAMBOO STEEL FURNITURE」シリーズ(一部)だ。コンセプトモデルは2011年にミラノサローネで発表されているが、ここで紹介しているのはそれをブラッシュアップした製品バージョンである。

▲「BAMBOO STEEL FURNITURE」シリーズ。

同ギャラリーのディレクター、ハン・デ チャン(Han, De Chang)さんによると、「コンセプトモデルはテープ状のスチールを実際に編み込むという難易度の高いものでした。その後nendoとの度重なる議論を経てなんとか製造コストを抑え、商品として成立するものに落とし込むことができました」という。

▲サンドブラスト加工のスチールパイプが井桁状に組み合わされ、レーザーカットされた座面を支える。互いのパイプを包み込むような意匠で、丁寧な溶接が印象的だ。

▲ハン・ギャラリーのディレクター、ハン・デ チャンさん

続いて、ルスカサ(RUSKASA)は、シンプルでエコロジーなものづくりにこだわった木の家具を製造しているメーカーだ。インハウスデザイナーのキン・ホアン(Kine Huang)さんとミア・チョウ(Mia Chou)さんによるベンチ「RU-ST007」は、3枚のカエデ板を接着した座面をCNCルーターと職人の手作業によってソファクッションのように彫り出している。見た目と触感のギャップが楽しいこの作品は、台湾のインテリアショップなどで販売されており、若い客層に人気だという。

▲2012年に発表された「RU-ST007」
クッションのように凹凸のある表面が木目の美しさをよりいっそう引き立てる。

▲会場では、このほか子ども向けの木製遊具や小物なども展示。

▲ルスカサのデザイナー。
(右)キン・ホアン(Kine Huang)さん
(左)ミア・チョウ(Mia Chou)さん

また20代後半の夫婦、ショーン・ユ(Sean Yu)さんとイーチン・チェン(Yiting Cheng)さんによる「二十二設計有限公司(22designstudio)」は、コンクリートを使った時計やジュエリー、文具などの小物雑貨を紹介。

大学在籍中、05年にデザインスタジオを立ち上げたふたり。「07年に東京で安藤忠雄氏設計の表参道ヒルズや21_21 DESIGN SIGHTなどを視察し、コンクリートという素材の面白さに惹かれた」という。それ以来コンクリートの作品を作り続けている。

螺旋階段状の文字盤や幾何学的な形のオブジェなど、建築の影響をにじませながらも「日用雑貨としての実用性を高めるため、独自に素材を研究してきた」という。現在は16アイテムほど展開しており、ニューヨークのMoMAをはじめ世界各国で販売されている。5人ほどのスタッフで設計、製造から販売までこなすセルフプロダクションだ。

▲置き時計「4th dimension wall clock」。螺旋階段状の文字盤は、一段分が1時間を表す。

▲二十二設計有限公司のデザイナー。
(右)イーチン・チェンさん
(左)ショーン・ユさん

自国の伝統的な工芸や文化を見つめながら、一方でOEMなどのものづくりで培った高度なテクノロジーや素材を使い、繊細でオリジナリティの高い作品を生み出している台湾の若手デザイナーたち。英語圏でもあるため語学力を生かして欧米のメーカーとも積極的にコラボレーションしているという。近年国として力を注ぐデザイン教育や海外進出のサポートを受けながら、今後も世界的なステージでのプレゼンスをいっそう高めていくことだろう。(文/今村玲子)




今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。