NEWS | 建築
2013.05.08 16:51
『吉良森子 | これまで と これから ― 建築をさがして』
吉良森子 著/メディア・デザイン研究所 企画・編集(LIXIL出版 1,890円)
ベン・ファン・ベルケル建築事務所勤務(UN studio)を経て、1996年に自らの事務所をアムステルダムに設立した吉良森子が、日本とオランダで関わった7つのプロジェクトをまとめた本書は、タイトルの通り、吉良の「これまで と これから」の「建築」が綴られている。
フローニンゲンにある「レモンストラント教会」のリノベーションでは、その宗派の変わることを恐れぬ姿とともに建築の変わる力について考察を巡らす。また、ライデンの「シーボルトハウス」では、日蘭交流400年をきっかけに立ち上がったシーボルトの邸宅を博物館に変えるための計画に携わり、建築局や文化財局といったさまざまな人を巻き込みながら1つ1つの課題に対峙し、時に教えを請いながら、1つの解を見つけていく軌跡が描かれている。
吉良は、当時のプロセスを振り返りながら本書をまとめたに違いないが、語り口はまるで現在進行形のプロジェクトのように、読み手の想像力を掻き立てる。吉良が「空間から時間、周辺環境へと広がってきた私の意識の“これから”は、暮らしに向かっているような気がする」という言葉とともに、今後の活動の行方にも注目したい建築家だ。
「現代建築家コンセプト・シリーズ14」、英文併記、並製、176ページ。以下、目次より。
これまで とこれから
1章 レモンストラント教会の再生
2章 コレクティブな住宅づくりから町づくりへ
3章 墓地のパビリオン
4章 シーボルトハウス
5章 人工島アイブルグの集合住宅
6章 柿の木坂のお菓子屋さん
7章 箱根の別荘とステイガー島の戸建住宅
「と」の詩学 戸田穣
作品データ