大阪市住之江区にFabLabが誕生
「Fabできる状況をFabする」

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こんにちは。FabLab Kitakagayaの白石晃一と津田和俊です。2013年の年明けから、国内4カ所目、そして西日本初のFabLabとして、大阪市住之江区にFabLab Kitakagaya(ファブラボ北加賀屋)を開設しました。これからどうぞよろしくお願いいたします。

これまでこの連載コラムでは、国内のFabLabや関連施設の特色・背景、進行中の取り組みなどについて紹介されてきました。いよいよ、読者の方々の中には「自分たちの地域にもFabLabをつくりたい」と思い始めている方や、「どうやったらFabLabはつくれるのか」と疑問を持ち始めた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。自分たちもそういう気持ちから、また関西周辺のそういった声の高まりに呼応し、12年1月、その可能性を検討し始めました。

地域性が大切にされているFabLabでは、そのつくり方も運営の仕方もさまざまです。メンバー募集、資金調達、場所の選定、機材の購入、運営方法の検討など、その地域に住む人たちによって、その土地に合ったかたちを模索しながら徐々につくられていきます。今後、日本各地でFabLabを始めたいという声が高まってくるだろうと予想し、その「徐々につくられていく過程」を開示することが必要と考え、自分たちのFabLabをつくる試行錯誤の過程をできるだけ公開しながら進めてきました。

12年1月に15名から始まったFacebookの公開グループには、13年3月末の段階で、関西を中心に約250名が集まり、多様なデジタル工作機械の情報共有や、つくり方に関する意見交換の場となってきています。続けていくことで懸念されるのは、内輪になってしまうこと。また、メンバーが増えていくことで懸念されるのは、お互いの顔が見えなくなること。そうならないよう、オープンアクセスで興味があれば誰でも参加でき、その偶然性を受け入れながら、顔を突き合わせた責任ある議論ができるような繋がりを試行しています。

Facebook公開グループへの参加メンバー数の推移

そんな繋がりのなかで、拠点の話が具体的に持ち上がったのは、12年の夏頃。新しい文化や芸術が集積する拠点として「クリエイティブビレッジ構想」が進められている大阪市住之江区北加賀屋が候補地に挙がりました。同年9月、北加賀屋の名村造船所跡地で開催されたプロジェクト「DESIGNEAST 03」でこれまでの活動を紹介する機会をいただき、その近くにある恊働スタジオ「コーポ北加賀屋」に13年から拠点を構えることに決まりました。

DESIGNEASTは、個(デザイナー)が中心となって自分たちが活動する町に「デザインする状況をデザインする」ことをコンセプトに、09年から毎年開催されているプロジェクトです。FabLab Kitakagayaにおいても、市民一人ひとりが中心となった、個人による自由なものづくりが始まる。その状況をつくっていきたいと考えています。それは、なぞらえて「Fabする状況をFabする」ことと形容しても良いかもしれません。

Photo by Naoto Kobayashi

これからFabLab Kitakagayaは、拠点のコーポ北加賀屋だけでなく、関西各地に出かけてプロジェクトやワークショップを展開していく予定です。各地で制作を行い、それぞれの場所を繋いでいくことを目指します。将来的には、温泉手形ならぬ「Fab手形」のようなものを携えて、各地に分散したワークショップスペースを転々と巡っていきながら、自分たちがつくりたいもの(こと)のアイデアを自分たち自身でかたちにすることができる状況をつくっていきたいとビジョンを描いています。(文/白石晃一・津田和俊、FabLab Kitakagaya

この連載はFabLab Japanのメンバーの皆さんに、リレー方式で、FabLabとその周辺の話題についてレポートしていただきます。