地域横断型タオルプロジェクト
「ルルルワークス」

3月中旬、タオル専門の商社である日繊商工が、新しいタオルプロジェクト「ルルルワークス」を立ち上げた。コンセプトは「製販一体のブランディング」。タオルの“目利き”としての役割を生かし、全国の優れた技術を持つ工場とコラボレーションしながら、「ルルルワークス」というレーベルの下に地域横断型の製品ラインナップを揃える狙いだ。

「これからの地域ブランディングは、産地ごとの対立や二者択一ではない」と語るのは、日繊商工の俣野太一社長だ。創業65周年を迎えた同社は、タオル専門の商社として製品の卸・小売りを行っている。同社が拠点とする大阪にも、愛媛・今治と並ぶタオルの産地、泉州がある。

泉州タオルは、あらかじめタオルを織ってから染める「後染め」が特徴。先に糸を染めてから織る「先染め」の今治タオルが、厚みがあってしっかりとした生地に仕上がるのに対し、泉州タオルは晒しと染めの段階で生地が引き締まり、しなやかで使いやすいものになる。「どちらもそこにしかない技術でつくられており優劣はない」と日繊商工の社員は説明する。

▲ ルルルワークスの第一弾は「FUTAE GAUZE & PILE(フタエ ガーゼ & パイル)」というシリーズ

▲ ガーゼ面とパイル面の織りの重なりがやさしい光沢を生む。ガーゼ面には衣料に用いられるアクリル糸を使用

一方で、俣野社長は「国内のタオル需給は安定しているものの、ライセンスブランドに依存した流通構造は昔のままだ」と言う。「製品の値崩れや儀礼ギフトの減少、加えて原料高といった課題が山積するなか、生活者の感性に訴えるタオル製品を提案していく必要がある。日本には、泉州と今治だけでなく東京や三重にも素晴らしい技術を持つ工場があり、産地にこだわらず全国の“匠”と一緒に製販一体で新しいものづくりをしたい」と、地域を横断するブランディングを発案したというわけだ。

プロジェクトの第一弾としてこの春デビューするシリーズが、「FUTAE GAUZE & PILE(フタエ ガーゼ & パイル)」。パイル面とガーゼ面が二重に織られたタオルは、薄く、軽く、乾きやすいのが特徴。一般的なタオルに用いられる糸の半分の細さしかない「40番単糸」を使うことで、やさしい肌触りや光沢を実現したという。コラボレーションしたのは大阪の竹利タオル。40番手の糸でタオルを織る高度な技術を有するメーカーだ。

▲ タオル用織機。繊細な糸でタオルが織られていく

▲ 工場でのプロセスを紹介する映像より(以下同)。「耳ミシン」で織り上がったタオルの端を縫い、続いて、繊維に付着した汚れや油分を取り除く晒しの工程へ

▲ 染めを終えて、洗いにかける工程。二重織りでパイル面とガーゼ面を同時に織り、後染めでコットンのパイル面のみを染めるノウハウを持つ

▲ タグ付けなどの縫製も国内の工場で1枚ずつ行う

ルルルワークスのVIおよび第一弾シリーズのプロデュースを担当したのは、デザイン事務所のエイトブランディングデザインだ。「コエドビール」や「ひかり味噌」など地域発信型商品のブランディングを手がけてきた西澤明洋代表の分析によると、産地単位のブランディングが成功するケースというのは、「メーカーが、つくるのも売るのも得意な場合に限られる」と語る。「ルルルワークスのプロジェクトが今までの地域ブランディングと違うのは、産地単位ではなく異なる産地の“一番星”を集める取り組みであること。そのメリットを生かして、良いものをつくるだけでなくパッケージとしてきちんと売るということが大切だと認識している」(西澤氏)。

若い層が楽しみながら365日使えるタオルをテーマに、パイルの目を模したアルファベット小文字の「l(エル)」を連ねたロゴで、「ルルルワークス」とネーミング。雑貨としてデパートや専門店での販売を狙い、パイル面とガーゼ面にカラフルなカラーバリエーションを持たせたり、ギフトにも対応できるパッケージを開発した。

▲ 西澤氏のデザインによるロゴマーク

▲ 第一弾は、ハンカチ、フェイルタオル、バスタオルの3サイズ展開

▲ ギフトセットも充実させた。フェイスタオルとハンカチタオルの「ルルルモーニング」(1,575円)、7枚入りの日替わりセット「ルルルウィーク」(3,990円)など

▲ バイカラーのほかにパターンも。「大吉」「流星」「四つ葉のクローバー」といったラッキーモチーフをギフトとして提案

西澤氏は「僕らがこの仕事でいちばん面白いと感じたのが工場でのものづくり。ルルルワークスのウェブでは、映像と写真で工場でのプロセスやつくり手の顔を紹介していく」と付け加える。目利き、またメッセンジャーとして、売ることを得意とする商社が表に立って提案する新しい「産直」のあり方。今後も1年に1シリーズというペースで商品開発に取り組んでいくという。(文・写真/今村玲子)




今村玲子/アート・デザインライター。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。