vol.30
「スティック-レッツ」

実家がタバコも扱う菓子店だったので、子供時代には、そのカートンを何十個も詰めて運ぶための専用ダンボールの空き箱が山ほどあった。タバコのダンボールは、他の菓子の配送用の箱とはつくりが違う。その壁は厚く頑丈で、穴を開けたり複数を組み合わせたりして、弟と一緒に秘密基地を「建設」したものだ。

カザキア・デザインによる「スティック-レッツ」を知ったとき、最初に思い浮かんだのが、そんな子供の頃の思い出だ。既成のオモチャがなくても、周囲にあるものを利用してさまざまな「ごっこ遊び」が楽しめた。その頃にスティック-レッツがあれば、すぐに近くの神社や空き地に飛び出し、枯れ木の枝などを組み合わせて要塞をつくり上げただろう。

というわけで、もうおわかりのように、スティック-レッツは、丸棒や木の枝を組み合わせて構造体をつくることができるシリコーン製のコネクタシステム(キット内容により11.99〜23.50ドル)である。2穴から4穴まであるパーツのバリエーションは、穴数によって鮮やかに色分けされており、完成後のアクセントカラーになるとともに、分解するときに見失いにくい。
 
枝と枝を結びつけて、子供たちを再び自然と結びつけることを目指すスティック-レッツ。もちろん大人たちのアウトドアでの遊び道具にもなり、また災害時にもいろいろと使い道がありそうだ。




大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。著書は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)、『iBooks Author 制作ハンドブック』(共著、インプレスジャパン)など。最新刊に『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)がある。