角と丸を楽しむ酒器「kakumaru」
ーーSHIKKI de SHUKI 2013より

去る2月14日〜16日の3日間にわたって、アクシスギャラリーで開催された「SHIKKI de SHUKI 2013展」。酒好きが自らの愉悦のために、欲しい器をデザインする、というシンプルな動機のもと、漆器というモノづくりの伝統技術とのコラボレーションによって、9名のデザイナーがそれぞれの理想の酒器をデザイン。動機のユニークさだけでなく、会場ではそれぞれの器とともに、協賛酒造各社のお酒が実際に試飲できるなど、見るだけではなく、体験でき、心地良くなれる、“想い”のこもった展覧会でした。

この連載では、各デザイナーが好みの酒に思いを巡らしながら、カタチと仕上げをイメージし、デザインした作品を、それぞれのコンセプトとともに紹介していきます。第1回は内堀法孝さんによる「kakumaru」。

「kakumaru」
デザイン:内堀法孝
漆器制作:(有)伊藤寛司商店、(有)木曽漆工、未空うるし工芸、(有)丸嘉小坂漆器店

コンセプトはカクマル。デザインを生業として三十数年、結局カタチを考えるときに帰結するのが丸、三角、四角。治まりとバランスの良さ、単純できっちりとした存在感が好きです。片口と盃の調和を思い描いたときに、お酒を湛える器として、容を明快に表す「カク」、口当たりとしての「マル」に帰着したわけです。

カクマル、よい響きですね。辛口のすっきりした日本酒が好みなので、そんな銘柄があったらいいかもしれません! 自画自賛のコンセプトです。カクマルというと昭和の学生運動を連想するかもしれません。私にとってその善し悪しはともかく、人々の心に熱い「思い」と「闘争」があった時代のイコンだと思っています。いつまでも丸、三角、四角との闘争(付き合い)を愉しみたいですね。

カク 片口
シンプルで容量わかりやすい片口を、一合升を基本形に二合の容量にデザインしました。

カク トレー
軽く、ひとりまたふたりでお酒を楽しむためのトレーです。片口と盃にちょっとした肴を置いていただきます。木曽漆器の板ものの技術を生かした仕上げです。伝統の堆朱、姫子が モダンデザインに昇華したかどうか。実は、漆器よりもグラスが似合うと思っています。

マル
盃は、最近の日本酒の飲み方からは、ほとんど使われることがなくなっています。しかしお酒そのものが器に広がる様子と香りの発散、そして飲み口の清さが盃の良さです。欠点は量。マルは盃とぐい呑みを組み合わせた形状により、飲み口も清さと残心ともいえる量を楽しむデザインになっています。円錐形の角度が口当たりの肝です。

内堀法孝/1957年三重県鳥羽市生まれ。79年金沢美術工芸大卒、同年諏訪精工舎(現セイコーエプソン株式会社)入社。ウォッチ、情報機器、CIデザイン、地場産業向けデザインおよびデザインマネージメント、‘98年冬季オリンピックメダルデザインディレクション等担当。85デザインフォーラム銅賞、独IF賞、グッドデザイン賞等受賞。ニューヨーク近代美術館永久保存選定。日本グラフィックデザイナー協会会員。

「SHIKKI de SHUKI 2013展」
主催:SHIKKI de SHUKI 2013実行委員会/共催:木曽漆器青年部、(財)塩尻・木曽地域地場産業振興センター/協賛:美寿々酒造(株)、笑亀酒造(株)、(合)丸永酒造場/後援:塩尻市