21_21 DESIGN SIGHT
「デザインあ」展レポート

本展は、NHKのEテレで放送中の教育番組「デザインあ」が発展した企画展である。同番組は、子供の「デザイン的思考」を育てることをコンセプトに、総合指導の佐藤 卓、映像監修の中村勇吾、音楽の小山田圭吾によって2011年4月にスタートした。日常生活のなかでデザインのタネを見つけ出す、あるいはデザインの感性を磨くためのさまざまなコーナーで構成されている。

本展では番組でおなじみの「うた」や「観察」のコーナーを引用しつつ、展覧会ならではの体験型展示も数多く揃える。番組を見たことがある人もない人も、子供だけでなくもちろん大人も体感的に楽しめる内容だ。

▲ ギャラリー2。「すし(食)」「本(メディア)」「うつわ(プロダクト)」「お金(経済)」「学校(組織)」という5つのテーマに沿って展示がまとめられている。(参加作家:佐藤卓デザイン事務所、岡崎智弘、studio note、Perfektron、plaplax)

展覧会のディレクターも務める佐藤 卓さんは説明する。「デザインマインドを育むことが本展のテーマ」と語る。「一般的にデザインはまだ『よくわからない』『自分には関係ない』『ただかっこいいもの』などと誤解されています。しかしデザインとは特別なものではなく、日常のいたるところに溶け込んでいるもの。それを発見したり、考えるための能力がデザインマインドです。それがあると普段の生活や仕事がより豊かになったり、心地よくなったりする。本展ではテレビとはまた違う体験として身体ごとデザインを感じてもらえたら」。

▲ 作品11「ちょうどいい」(佐藤卓デザイン事務所)
ものの“ちょうどいい”大きさやかたちを探る

▲ 作品12「つみき寿司」(plaplax)
触れる展示の1つ。「色やかたちの組み合わせを試していくなかで、フードデザインにもつながっていくのではないか」とplaplax

▲ 作品19「しょうゆをさす」(佐藤卓デザイン事務所)
ある機能をプロダクトの構造やかたちがどのように実現しているかを観察する展示。さまざまな角度からものを眺め、その成り立ちを考えるということは、人の暮らしや工夫を追体験することでもある

▲ 作品22「なんでも100円分」(studio note)
セロハンテープやキャビア、水道水など100円分の量を視覚化する

番組と同様、会場には押しつけがましいガイダンスや解説文などはいっさいない。その代わり小山田圭吾さんによるリズミカルでアップテンポな音楽と、中村勇吾さん監修の映像がナビゲーション役となり、本展でも大きな存在感を放つ。

中村さんは「今回はたくさんの作家とともに、大人たちが本気を出して子供も楽しめる、展示と遊びの中間のような場所をつくったというイメージ。会期中、子供たちが走り回るにぎやかな光景が見られたら嬉しい」と語った。


▲ 「モノ・オトと映像の部屋」(tha ltd. +小山田圭吾/コーネリアス)
「デザインあのテーマ」「デザインかぞえうた」など番組でもおなじみの音楽が、4面プロジェクションの映像とともに楽しめる。中央テーブルにあるもののライティングと音楽が同期する

▲ 映像作品「動く『あ』」(tha ltd.)
壁に向かって身体を動かすと「あ」の文字も一緒に動く

▲ 「ふろしき」(佐藤卓デザイン事務所+山田悦子/むす美)
映像に合わせてふろしきのさまざまな包み方を体験するコーナー。折り紙の体験コーナーもある

▲ 「デッサンあ」(tha ltd.)
番組の主要コーナーの1つである「デッサンあ」は、モチーフを取り囲むように8人がデッサンし、最後にその絵をつなげて360度から見た映像にするというもの。ものごとをさまざまな角度から見るというコンセプト。展示では、タブレット端末を使って体験できる

会場では、中庭や階段の壁などさまざまなところに「あ」の文字が隠れている。「見つけられるかな?」ーーデザイナーや作家たちから子供たちへのメッセージは、その一文字に込められているようだ。(文・写真/今村玲子)

▲ 『「あ」の広場』(plaplax)


「21_21 DESIGN SIGHT 企画展 デザインあ」展

期 間:2013年2月8日(金)〜6月2日(日)
    火曜休、11:00〜20:00

会 場:21_21 DESIGN SIGHT

入場料:一般1,000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料

*「デザインあ」展スペシャルサイト(現在は閉鎖)
この展覧会は、作品の撮影が可能。撮影した写真にハッシュタグ「#design_ah」をつけてTwitterやInstagramへ投稿すると、スペシャルサイトに写真が掲載されるそうだ。




今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。