台湾のクリエイティブ産業を支える
「台湾デザインセンター」

台湾のクリエイティブ産業を支えている台湾デザインセンター台北市の中心部に位置し、日本統治時代の1937年に建設された煙草工場の跡地に、2004年政府経済部の予算でオープン。台湾におけるクリエイティブ産業の発展と世界での競争力を高めることを目的としている。その活動は、1)デザインに関わる素材・色彩・人体工学の研究、2)研究データを必要とする台湾企業に提供、3)台湾のデザインを紹介するための中国圏初となるデザインミュージアムの運営、と美術館の機能に等しい。

デザインセンターに隣接する台湾デザインミュージアムでは、デザインの歴史から最新技術の展示まで、多様なコンテンツが並ぶ。

さらに、企業や政府機関に対するデザインコンサルティングや、海外企業との提携による若いデザイナーへの職業訓練機会の提供、台湾デザインに対する海外での認知度向上のための情報発信、展示会サポートなどを行う。まさに、台湾デザインを支えるゴッドマザー的存在だ。ドイツ・デュッセルドルフ、米国・サンフランシスコ、そして東京にもオフィスを設けることで海外のデザイン機関とのネットワーク構築にも注力している。

デザインセンターとともに、台湾デザインミュージアムが入る旧「松山煙草工場」の建物。同じ敷地には伊東豊雄建築事務所が手がけるオフィス、ホテル、劇場などが入る複合施設の開発が進む。

このように台湾政府がデザインに力を入れる背景には、近隣のアジア諸国の安い労働力を前に、これまで台湾が得意としてきたOEM製造業が太刀打ちできなくなってきた事情がある。マージンの薄いOEMから、台湾オリジナルのデザインでオリジナルの製品をつくるクリエイティブ産業への転換こそが生き残る道ということなのだろう。(文/長谷川香苗)