NEWS | プロダクト
2013.01.09 17:08
『あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ 柴田文江のプロダクトデザイン』
柴田文江 著(ADP 3,675円)
プロダクトデザイナー・柴田文江による初の作品集。
デザイナーの作品集といえば、これまで写真を中心に構成したものが多かった。しかし、本書では、柴田自らが1つ1つの製品について、当時の思いや考えを綴っている。発表後にどのような反響があったのか、時には批判的な意見も含めて、それに応えるかたちで執筆している。あの製品にはこんなエピソードがあったのか、このような考えでデザインされていたのかなどを改めて知ることで、既知の製品も見え方が変わってくる。
また、アートディレクションを手がけた葛西 薫は、製品の全体像を伝えるのではなく、象徴的な部分にフォーカスしたり、使用シーンを感じさせるような写真を撮り下ろした。それも、すべてモノクロの写真。本書タイトルの「あるカタチの内側にある、もうひとつのカタチ」が浮かび上がってくるような、感覚に訴える写真であり、これもまた従来のデザイナーの作品集とは違う要素となっている。
柴田は、本書の刊行を記念して開かれた講演会で、「ブックデザインは、紙やフォントといった限られた素材や要素から成り立っているにも関わらず、無限といえるような奥行きや広がりがある。それに比べるとプロダクトデザインはまだまだだと思った」と語った。
本書の刊行をきっかけに、ますます柴田のデザインが鋭い視点を帯びていきそうな、そんな予感を与える一冊。寄稿文は、藤崎圭一郎。160ページ、B5変型、角背上製本・箱付き、日英のバイリンガル。