REPORT | アート
2012.09.20 19:00
「第29回全国都市緑化フェアTOKYO」が都内6カ所の会場を中心に、9月29日(土)〜10月28日(日)まで30日間にわたって開催される。それに先立ち、東京・青山のスパイラルで、フェア期間中に実際に井の頭恩賜公園に設置される遊具を9月23日(日)まで展示公開している。
同フェアは「緑豊かな潤いのある都市づくりを進める」ため、昭和58年から全国の自治体で毎年開催するもの。東京での実施は昭和59年以来、28年ぶりの2回目となる。上野恩賜公園、井の頭恩賜公園、日比谷公園、浜離宮恩賜庭園、海の森、国営昭和記念公園といった6つのメイン会場に、協賛会場を加えて、さまざまなイベントが開かれる予定だ。
▲ 「GEN-KI SLIDE」 佐藤好彦×コトブキ
「元気」という文字をかたどった滑り台。言葉の持つ力を公園に持ち込みたい、という意図だ。コトブキは遊具やストリートファニチャーを製造する大手。作品に使用されている板やネジなどに創業90年余のノウハウが凝縮している。
今回スパイラルで紹介される4つの遊具は、公園のなかで個性豊かなアート作品が楽しめる「TOKYO GREEN Art Project」の1つ。スパイラルが企画制作し、佐藤好彦、シアタープロダクツ、鈴木康広、月岡 彩といった4組のアーティストと企業がコラボレーションして実現させた。いずれも「公園の使いこなし」がテーマで、公園での新しい楽しみ方を提案する。
AXIS誌の連載でもおなじみのアーティスト・鈴木康広さんは、ベンチの製造を得意とする中村製作所と組み、「屋根のベンチ」を制作。ハシゴを登ってヒノキの屋根に出れば、普段より高い視点から身近な景色や公園の木々を眺めることができる。屋根に座って空を見上げるのにふさわしい角度を模索したという。
▲ 「屋根のベンチ」 鈴木康広×中村製作所
ファッションブランドのシアタープロダクツは、ハンモックの商品開発やイベント企画などを行う里山ハンモックと協働。衣服の形をしたハンモックを制作した。寝そべる部分は、ネットの代わりに厚手の帆布でつくった男性用スーツと女性用ワンピース。これを着用することで、使用者もハンモックの一部になって揺られるという不思議な感覚を味わえる。
▲ 「公園のワルツ」 シアタープロダクツ×里山ハンモック
フェアの期間中はこれらの遊具が井の頭恩賜公園に設置され、実際に子供も大人も使うことができる。また写真家の川内倫子さんや鈴木さんをはじめ、さまざまなアーティストがワークショップを展開する予定だ。
公園の遊具は、安全性やメンテナンスフリーなど管理側の規定に沿って開発、運営されることが大半だ。そのため、誰も使わないまま雨ざらしになっていたり、「子供がケガをして危ない」と取り外されてしまったり。どこの公園も同じような遊具や遊び方ばかりという状況に対して、今回制作された作品は、どれもある意味“ドキリ”とするものだ。しかし、遊び方のプロが教えてくれたり、いつもより慎重に構えて遊んだほうが、ずっと豊かな体験ができるのではないだろうか。
▲ 「キリカブテント」月岡 彩
樹木の木肌がプリントされたテント。10月14日(日)には井の頭恩賜公園でこの遊具を使ったワークショップ「月岡流・忍者学校『指令:忍者になって井の頭恩賜公園を探検せよ』」を行う予定。
本展のプランナー、守屋慎一郎さん(スパイラル)によると、「iPhoneが普及したのはベースだけ用意して、そこにのせるアプリの設計を開放したから。公園もアプリの部分をもっと自由にすることで、新しい使い方ができるはず。フェアではその実験ができたら」という。今回の提案が実際に井の頭恩賜公園で人々に開放されたとき、みんながどんな反応を示すのかが楽しみだ。(文・写真/今村玲子)
「NEW GREEN STORIES アートが紡ぐ、新たな公園の時間」
期 間:2012年9月19日(水)〜 9月23日(日)
11:00〜20:00
会 場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
入場無料
主 催:ワコールアートセンター
共 催:第29回全国都市緑化フェアTOKYO実行委員会
「第29回全国都市緑化フェアTOKYO」
会 期:2012年9月29日(土)〜10月28日(日)
会 場:上野恩賜公園会場、井の頭恩賜公園会場、
日比谷公園会場、浜離宮恩賜庭園会場、
海の森会場、国営昭和記念公園会場 ほか
主 催:東京都、財団法人都市緑化機構
今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらへ