vol.20 カーボンメッシュフレームバイク
「デルタ7 アセンド/アランティックス」

自転車フレームの素材には、木、竹、鉄、アルミ、グラスファイバー、カーボン、ケブラーなどさまざまなものがあり、それぞれに独自の特性を持つ。しかし、どのような素材を用いてもフレームの断面が閉じたチューブ形状(もしくはトポロジー的に等しい有機的フォルム)であることに変わりはなかった。

そのため、従来、フレームの重量軽減は、素材そのものに軽さを求めるか、チューブの肉厚を薄くするしか方法はなかったが、米国のデルタ7が開発し特許を取得した「アイソトラス構造」は、チューブそのものをカーボン繊維で編み上げたメッシュ構造にするという画期的な製法でブレークスルーを生み出している。

力学的に微細なトラスを組み合わせたのと同じ効果を持つアイソトラスフレームは、圧縮、ねじれ、曲がりのすべての力に対して剛性を発揮し、しかもフレーム単体の重量はロードバイクの「アセンドモデル」(フレームのみで約6,000ドル)で約1,050グラム、マウンテンバイクの「アランティックスモデル」(同約4,900ドル)で約1,250グラム。これよりも軽いカーボンフレームも存在するが、デルタ7では、強度や耐衝撃性まで考慮した場合、アイソトラスのほうが高いバランスを実現すると謳う。

実際にはデルタ7は、この構造の自転車を2009年から製造しているが、その間にも手作業によるカーボンメッシュの編み上げを自動化してコストダウンを図るなど、製造方法を進化させてきた。その価格ゆえに出荷台数が少なく、まだ一般には知られていないため、自転車デザインに一石を投じる存在として、あえてここで紹介することにした次第だ。




大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。近著は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)など。