東京・代官山 T-SITE内のレストラン
「IVY PLACE」の心地よい灯り

昨年12月、代官山に蔦屋書店をふくむT-SITEがオープンしました。今回は、そのT-SITE GARDEN内にオープンしたレストラン「IVY PLACE」の照明についてです。以前にもこのコラムで紹介した「breadworks」「CICADA」を運営している TYSONS&COMPANY の新しいお店です。インテリアデザインはbreadworksと同じ、KROW の長﨑健一さん。

IVY PLACEのインテリアの特徴は古材とアンティークの照明とを相性よく組み合わせ、友人の別荘に訪れたような、どこか懐かしいイメージ。朝は7時開店で、気持ちよい朝の空気のなか、自慢のパンケーキなどの朝食がいただけます。そして、ランチ、カフェタイムからディナーと、深夜2時まで楽しめます。

商業施設内とはいえ、独立した建物なので近隣の店とはまた違った雰囲気です。カフェ、バー、ダイニングの3つのゾーンがあり、統一されたイメージの中にも雰囲気はそれぞれ。使い方の違いもあって、調光のタイミングや種類も個別に設定しています。季節によって日の出、日の入りの時刻を自動的に感知し、設定時間になるとゆるやかに明るさが変わっていくという調光システムによって、違和感のない明るさの変化の中で過ごしてもらえるようになっています。

カフェとバーにはこの店オリジナルでシンボルともなるようなオーダー照明を設置。どちらも空間のボリュームを活かしたデザインです。

店内は最大の明るさにしても明るすぎず、光の色も温かみのあるように提案しています。最近は、LED照明が進化してきているなか、まるで競うように明るさアップが焦点の1つになっています。光の色、インテリアとのバランス、空間の用途、そこに来る人たちの雰囲気を考え、求められるのは「心地よさ」。つまり、明る過ぎず、暗すぎない微妙な匙加減です。LEDの光にも、こうした心地よさを演出できるような進化を期待したいところです。

先日、調光器メーカー、ルートロンアスカのセミナーで書家・文字文化文筆家 宇佐美志都氏が「明」という漢字について話をされていました。「明」の“日”は丸窓で、“月”はお月様。丸窓から差し込む月あかりへの感謝から生まれた漢字であると。人工的なエルネギーがない時代、暗闇を照らす月明かりへの感謝から生まれた「明」という字から学ぶ価値は尊いというのです。

Photos by Ryo Shirai

IVY PLACEに多くの人たちが訪れ、会話やお料理を楽しんでいるのを見ながら、ここには光がつくる“心地よさ”がささやかながらあると思いました。優しく差し込む月明かりのような柔らかな光りが、このお店にはピッタリだと思うのです。(文/マックスレイ 谷田宏江)

IVY PLACE
https://www.tysons.jp/ivyplace/
TYSONS&COMPANY
https://www.tysons.jp/

この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。