シーソーのような不思議なSHELF
神田武志「unbalance」

「SHELFに納まっているもの」

比重の全く違う、木と金物とが釣り合うシーソーのような不思議なSHELF「UNBALANCE」。これが、私たちの担当した什器です。片側にはお酒、反対側には書籍を置き、棚が傾いたり、水平をとったりするという動きで、「息抜きと仕事」「遊びと教養」といった生活のバランスを表現するため、この什器には可動する機構が不可欠でした。

幅180cmの大きさ、なおかつ重さもある棚。その動きを制御するために、什器中央のドラム型の限られた収納スペースに機構を納めるのは、知識や経験のないわれわれにとって、全く先の見えない課題でした。

それでも、シーソーや天秤などの動きを研究し、さまざまな機械部品のカタログを読みあさることで生まれた機構のアイデアを、制作会社や部品メーカー、デザイナーの方々と何度も話し合い、修正しながら、カタチになっていきました。完成間近で機構がうまく動作しなかったときは、周囲の想いをカタチにできなかった不甲斐なさに涙を流したこともありました。

什器製作を通して“想いをカタチにする”という行為がどれほど難しく、どれだけ多くの人の努力の上に成り立っているかを知り、だからこそ感じられる達成感を実感しました。ドラム型の収納部には、上下10cmわずかの揺れを生み出す機構と一緒に、そんな熱い想いが納まっています。(文/加藤竜八、文化空間事業部 事業企画部 プランナー)

「unbalance」
デザイン:神田武志(丹青社)
協力会社:(株)木下製作所 ほか
撮影:kenpo

展示や内装の設計・施工を手がける丹青社が、2009 年から新入社員教育の一環として行っている「SHELF制作研修」。本連載では、研修に参加された丹青社の方々に、それぞれの作品について語っていただきます。また、この研修成果については、20119月27日(火)〜10月5日(水)までアクシスギャラリーで開催された「人づくりプロジェクト SHELF展」において、展示報告されました。