モアレが表面に現れるシェルフを実現するために
小林幹也「MIRAGE」

什器制作を通しての発見

人の視線の高さや、人との距離、段数によってさまざまなモアレが表面に現れるSHELF「MIRAGE」。これが私たちの担当した什器です。モアレを生じさせる規則性のある模様として、パンチングを施したステンレスを使って、全く同じ形のシェルフを20段つくる。

当初は言葉にすると簡単なように聞こえましたが、全く同じ形を20段ということは、全く同じ寸法、形状にしなければならないということです。加工精度にばらつきがあっては、重ねたときの一体感が出ないということがわかり、ものづくりの知識と経験が乏しい私たちにとっては、あまりにも困難な条件でした。

しかし、与えられた条件の中で、クライアントの要求を実現するにはどうすることがベストなのかを、確かな根拠を持って整理していくうちに、少しずつ出口が見えてきました。

3カ月の間、何度も回り道をし、幾度となくチーム内で揉めながらも、多くの方々の協力のもとに完成したSHELFは、「ものづくり」の達成感を与えてくれました。これから先待ち構えているのであろう多くの壁にも、チーム丹青として向かっていけば必ずベストな答えを導き出せる、そんなことを感じさせてくれた「MIRAGE」に感謝したいと思います。(文/帯川裕丞、CS事業部 コミュニケーションデザイン統括部 デザイナー)

「MIRAGE」
デザイン:小林幹也(MIKIYA KOBAYASHI DESIGN)
協力会社:(有)イーシー・キッツ、海内工業(株) ほか
撮影:尾鷲陽介

展示や内装の設計・施工を手がける丹青社が、2009 年から新入社員教育の一環として行っている「SHELF制作研修」。本連載では、研修に参加された丹青社の方々に、それぞれの作品について語っていただきます。また、この研修成果については、20119月27日(火)〜10月5日(水)までアクシスギャラリーで開催された「人づくりプロジェクト SHELF展」において、展示報告されました。