韓国・ソウルのホテルや飲食店のライティング事情をレポート

最近、毎月のように韓国へ出張しています。景気が悪いのは東京もソウルも同じだと思いますが、ソウルのほうが比較的賑わいや活気があるように感じます。このツリーイルミネーションはサマセットホテル1階のサルヴァトーレの店内からテラスを見たものです。ほっとします。今回は、2003年度「ワールドバリスタチャンピオンシップ(WBC)」において、 世界最年少かつオーストラリア人としては初の世界チャンピオンとなったポール・バセットによるカフェ「ポールバセット」の韓国の店舗を中心にご紹介します。

市内中心部と金浦空港の間の新道林にできたショッピングセンター、ディー・キューブ・シティー内のテナントです。このショッピングセンターはジョン・ジャディーの設計とのこと。氏の設計した六本木ヒルズほど大規模ではないですが、必要なものはほとんど施設内で賄えるキャパシティー。既設でベース照明があったので部分的に照明を追加しました。

そのディー・キューブ・シティー内のシェラトンホテルの客室。ベッド上の2灯のダウンライトはピロータッチ(枕照射)ではなく、壁面のアートパネル用の小型ウォールウォッシャー。開口径φ75のウォールウォッシャーは海外プロジェクトではほとんど見かけることがないアイテム。素晴らしい。

洗面台の照明はミラー両側のフェイスライトと台下部間接照明。フェイスライトの色温度(光色)は白く冷たい感じで酔払った翌朝の顔を見ると、何歳も老け込んだような感じ(あくまでも主観ですが)。台下の間接照明は雰囲気をつくる目的かナイトライトの用途なのか、微妙な明るい照度設定。

ポールバセット江南店は工事が大幅に遅れて余儀なく引渡しを延期することに。オープン日に限りなく近いスケジュールでライティング調整を行い、ディスプレイと同時進行になりました。海外プロジェクトはコミュニケーションに時間を要することも多く、もはやこれが一般的な展開になりつつあります……ふぅ~。

木目の色合いは鍋料理店「たつみ」。ブランドショップが林立するアックジョンの通り、ルイ・ヴィトンの真裏に位置します。設計事務所スピンオフの塩見さんと宍倉さんと暗くなるのを待ちながら写真を撮りました。

たつみと同じビルの1階にポールバセットが後日オープン。ギャラリーに隣接しておりテラス席で休憩。良い感じです。

ソウル中心部より北にクルマで1時間弱のパジュ市。同市になるロッテ運営のアウトレットモール内のポールバセット。天井は高く、ファサードはガラス張り。使用できるランプの規制があり、直径50、95、121のミラー付LEDから選択、PHILIPS MASTER LED PAR30 12ワットを指定しました。4m弱の配線ダクトからでもしっかりとした明るさを得ることができます。

サマンサタバサ・ロッテワールド店。設計はグラマラス森田さんと大場ロイさん。象徴的な葡萄の房のようなガラスグローブ照明は、ランプの不具合がありましたが調整や交換をして問題解決へ。

市内中心部から離れていますが金浦空港へ約30分でアクセスできるため、航空会社のクルーも多く滞在しているグランド・ヒルトン。徐々に部屋もリノベーションが進んできており、新しい部屋でのスナップ写真。間接照明が多く柔らかな光で構成されている。ベッドサイドのスタンドライトがブラックシェードで、リーディングライト(読書灯)の明るさが低いので、就寝前の読書は少しキツイかもしれません。

街からのアクセスは不便ですが、このホテルの良いところは、山の麓に立っているため、窓から山肌が感じられるところです。私はときどきバルコニーに出てずぼぉーとしています。しかし木々の自然を感じながら、遠くまで見渡せる眺望が好みであれば南山界隈の新羅、グランドハイアット、バンヤンツリー(旧タワーホテル)などの特1級ホテル(5つ星)がお勧めです。(文/マックスレイ 伊藤賢二)

この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。