前回紹介した、スヴェン・エルヴァーフェルトさんの料理本が出ました。2007年から10年まで4年間のクリエイションの集大成で528ページ、図版353点、3.5kgとズシッと重い。料理はもちろんですが、シュトゥットガルトのグラフィックデザイナー、ヴォルフガング・ザイデルの編集デザインも過去の料理本とは一線を画すと評判です。
ザイデルはマセラーティやランボルギーニの新しいコーポレートデザインなど自動車ブランドとのコラボレーションで知られます。庶民の定番料理をデコンストラクションしオートキュイジーヌに新解釈するというエルヴァーフェルトさんのスタイルがグラフィックデザインのコンセプトの源となりました。
最初はページ数がついていない本なのかと首をかしげるのですが、光の当たり具合でページ数が魔法のように浮き上がって見えて驚きます。マットな白紙にページ数だけ光沢の出る印刷効果なのです。
ルチア・エラーツによる撮り下ろしの写真は、厨房で使う器具や、調理途中の食材のディテールなど、エルヴァーフェルトさんのクリエイションの真髄を絶妙にキャッチしています。
今はドイツ版のみですが、英語版が1,000部限定でこの冬に発刊の予定だそうです。さて、こうして記事を書いている最中にドイツのミシュランガイド2012の内容が発表されました。ドキドキしましたが、エルヴァーフェルトさん無事3つ星獲得でした。おめでとうございます!(文・写真/小町英恵)
この連載コラム「クリエイティブ・ドイチュラント」では、ハノーファー在住の文化ジャーナリスト&フォトグラファー、小町英恵さんに分野を限らずデザイン、建築、工芸、アートなど、さまざまな話題を提供いただきます。今までの連載記事はこちら。