「カタチがカタチになるまでに」
上垣内泰輔さんが求めた機能は大きく分けて4つありました。「A4・B5サイズの書類が入ること」「棚の下部でパソコンが操作できること」「作業灯の設置をすること」「8mmという厚みで構造をつくり、なおかつ色鉛筆を設置しても引き出しがスムーズに開閉できること」。この4つの点とラフスケッチを元に取り組みが始まりました。
しかしすぐに大きな壁となった点が8mmという厚みで構造をつくることでした。木ですべての構造をつくるとなると強度が不足し天板がたわみ、引き出しの開閉ができなくなるという状況が考えられました。また金物で構造をつくった場合、強度は十分に保てるものの、コストがかかり、簡単に持ち運びができる重量に収まらないということが考えられました。
上記の点を踏まえ、木と金物の両方を用いて製作を進め、強度・重量・コスト・デザインディテールのバランスが取れるポイントを模索し始めました。
しかし、私たちには木や金物に対する知識が全くなかったため、協力いただける会社に各々が足を運び、コミュニケーションを取り、意図を説明し、アドバイスをいただくというサイクルを繰り返すことで、少しずつカタチになっていきました。またその過程で得た情報を元に上垣内さんに提案し、デザインディテールを詰めていきました。
この製作過程を通して、相手とのコミュニケーションの重要性を認識するとともに、コミュニケーションを取るための準備の大切さ、相手を信頼し思いやった行動をすることでカタチ見えてくるということを学びました。これからもその心を忘れずに邁進していきたいと思います。(文/山田晃裕, 文化空間事業部 制作推進統括部 制作)
「OTONA-ZUKUE」
デザイン:上垣内 泰輔(丹青社)
協力会社:児山工芸(株)、(有)エーエス ほか
撮影:ピップス 御園生大地
展示や内装の設計・施工を手がける丹青社が、2009 年から新入社員教育の一環として行っている「SHELF制作研修」。本連載では、研修に参加された丹青社の方々に、それぞれの作品について語っていただきます。また、この研修成果については、20119月27日(火)〜10月5日(水)までアクシスギャラリーで開催された「人づくりプロジェクト SHELF展」において、展示報告されました。