NEWS | 展覧会
2011.10.04 18:27
カバンメーカーとして国内最大手であるエースは、今年で創業71年目を迎えます。戦後の復興期に開発したナイロンバッグから、空前のロングセラーとなった「マジソンバッグ」、さらに海外旅行に不可欠な各種スーツケースまでと、同社がこれまで世に送り出してきた製品の数々は、移動や旅行をともなう日本人の生活や文化に大きな影響を与えてきたといえます。
▲白いスーツケース「デボネア」は1967年製。当時の大学生の初任給とほぼ同額の価格設定はまさに高嶺の花でした。
時代の移り変わりとともに、常に新たな提案でもってカバンの進化を目指してきたエース。その製品群をインダストリアルデザインの視点から検証し、「モチハコブカタチ」としてのカバンの魅力を伝えようというのが同展です。
▲1階の展示風景の様子。エースの歩みが一堂に。旅行やビジネスなど、さまざまなシーンが思い浮かびます。
東京藝術大学 大学美術館陳列館を会場に始まった展覧会は2フロア構成となっており、1階展示室では、創業から現在までの商品を年代を追って展示します。日本のプロダクトデザインの変遷を紹介するパネルとともに展示品を見ていくと、“スタンダードなカタチ”を標榜するエースのものづくりの立ち位置がうっすらと見えてくるはずです。ファッションアイテムという括りで語られることも少ないないカバンですが、エースのものづくりはそうした一過性の個性に迎合するのではなく、むしろ普遍的な価値の追求にあることが理解できるでしょう。エースが本展のテーマ企業に選ばれた理由の一端がそこにあるのではないでしょうか。
▲2階の展示風景。製品がどのようなパーツ類から組み上がっているかがわかる解剖風の展示となっています。
さらに2階展示室では、製品の安全・安心に直結する品質へのこだわりを映像などで紹介します。 「品質を証明する音」と題された耐久実験や性能試験などの模様からは、こだわりもさることながら、カバンづくりの奥深さや高い技術力が垣間みれます。「10年使い続けても大丈夫!」という文句は、こうした厳しい品質基準をクリアすることで生まれているのですね。そのほか自社製のスーツケースやカバンの部品構成をスライス状態で解説した展示手法に興味津々。
▲会場の一角では、藝大生が考えた「モチハコブカタチ」の作品も展示されています。
エースが創業以来培ったカバンづくりへのこだわりからは、さまざまなデザイン活動のヒントが見出せることでしょう。改めて、デザイン力を持った企業であることを認識させられると同時に、展示品を通じて自分史であったり、さまざまな思い出に触れられるという意味では、モノとコトの両方を重ねることのできるデザイン展ともいえます。お見逃しなく!
「モチハコブカタチ」—かばんのトップメーカー、エースのデザイン展
会期:2011年10月4日(火)〜23日(日)
会場:東京藝術大学 大学美術館陳列館(1階・2階展示室)
東京都台東区上野公園12-8
開館時間:10:00〜18:00(入館は17時30分まで)
休館日:会期中無休
入場料:無料
問い合わせ:Tel. 03-5843-0606