「そりゃ、私だってね、大変だったわよ、いろいろ。数々のテストをクリアしてね、やっとの思いで材料になれて工場に行ったのよ。もちろん、部品にもなったし、箱にも詰めてもらったわ。もう少しだったのよ。製品として輝けるはずだったのに……。それが、なによ!! ある日突然、鉄くず呼ばわりされてさ!! やってらんないわよ!!」。
「いや、ちょっと、シャレになんないって。だってさ、製造ラインには乗ったんだぜ、俺たち全員。それがさ、俺の横にいたやつは製品になったのにさ、俺、端材だよ!! 木くずだよ!! 俺だってあいつだってぜんぜん質変わんないんだぜ!! 何なんだよ、この差はよ!!」。
私が毎日接するマテリアルたちの気持ちはこんな感じでしょうか。こんなマテリアルたちに、一度でいいから本来の素材としての活躍の場を提供しよう、もう一度、別の姿でもいいから輝いてもらおうというのがナカダイの考えているビジネス。
少々わかりにくいかもしれないので、食べ物に例えてみます。
1 誰に何をつくろうか(デザイン・企画)
2 材料と調味料を用意する(設計)
3 料理する(製造)
4 食べる(消費)
5 使用しなかった食材を捨てる(廃棄)
通常、1の段階は4の食べる人、消費する人をターゲットにしています。逆に言うと、4が決まった時点で逆算していく。モノづくりの始まりは製造時ではなく、デザイン時であると考える理由です。結婚式場のシェフは、式に参加する50名の方に同じサービスを提供するために、魚をさばき、同じ大きさの切り身をつくり、塩、故障などで下味をつけて、バターで焼いて、ムニエルをサーブする……。ここまでが今までのモノの流れとモノづくり。
そして、ここからがナカダイの考えるリマーケティングビジネスです。
6 使用しなかった食材が集まる(ゴミ処理場)
7 その食材を使って、誰に何をつくろうか考える(デザイン・企画・設計)
8 料理する(製造)……
捨てるという行為は、同時に、それらを受け入れる私たちにとっては材料と調味料の調達であり、モノづくりのスタートです。私たちにとっては、捨てることと調達することって同じことです。視点の違いです。考え方の違いです。私たちの工場には、製品の切り身をつくった後の“カマ”が毎日、山ほど入ってきます。私は、結婚式で、50人分の“ブリカマの塩焼”がメイン料理で出てくるようになれば面白いと思う。素材の良さを最大限に生かして塩を振っただけの“カマ”。“カマ”を主役にするという考え方と、そもそも“カマ”だけをどうやって50個も調達するか? しかも、同じくらい脂ののった品質のモノを。これが、リマーケティングビジネスの肝です。
たくさんの会社が消費者に満足してもらうためにたくさんのサービスを提供し、その結果いろんな種類の不要なモノが出てくる。それらが集まる廃棄物処理場は、素材の宝庫であることは容易に想像できる。問題は、捨てる側がゴミとして捨てるのか、素材として捨てるか、集めた私たちがゴミと思うか素材と思うか。
「……それが、なによ!! ある日突然、鉄くず呼ばわりされてさ!! やってらんないわよ!! ん?な~んだ、ここ、ナカダイじゃない。よかった~。ここだったら、私ももう一度、輝けそう……」。(文・写真/中台澄之)
この連載は株式会社ナカダイ前橋支店支店長・中台澄之さんに産業廃棄物に関するさまざまな話題を提供していただきます。