近年、写真の観賞方法として、デジタルフォトフレームが急速に普及している。
イメージの入り口にあたるカメラがデジタル化し、データもデジタルのまま編集され、携帯電話やスマートフォン、コンピュータ、ネット上のフォトアルバムで管理されるようになった今、一般消費者にとっては、出力もデジタルのままで完結するほうが便利かつ効率的になってきているためだ。
バックライトの透過光で観賞する写真は、プリントとは異なる美しさを醸し出す。その美しさをさらに高め、フレームごと1つの作品として鑑賞できるようにデザインされた製品が、パロットの「ディア・バイ・ノーデザイン」(68,250 円)である。
ディアは、イメージそのものを表示するスクリーンと、それを背後から照らすライトユニットを分離して配置することで、ちょうどアナログのカラースライド(ポジフィルム)とライトボックスのような関係をつくり出した。透明のスクリーンに浮かび上がるようにして写真データが表示され、それが光によって可視化される感覚だ。
アンドロイドOSによって機能するディアはネット接続も可能であり、内蔵されたフレームチャンネルというウェブコンテンツサービスによって天気やニュースなどの情報を表示させることもできる(ただし、日本語には未対応)。
個々のユニットには固有のメールアドレスも与えられ、メモリカードやカメラのケーブル接続によってイメージを転送する以外にも、コンピュータやスマートフォン、カメラ付き携帯などから写真を添付したメールを送ることで、離れた場所からでも表示したい写真を送ることができる。さらに、iPhone用の画像転送アプリ「ムーバー」を利用すると、画面上の写真を指で弾くような動作で、イメージを直感的にディアに送って表示させることも可能だ。
ディアは、単なる新しいデジタルフォトフレームではなく、デジタル技術によってつくり出された、写真を見せるための新たな方法と言えるだろう。
大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。近著は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)など。