REPORT | アート
2011.04.08 14:27
ビルをまるごと使って展覧会をやろうという企画だが、それだけではない。とにかく手持ちのカードを集めてシャッフルしよう、そこから新しい視点を見出そうという意欲的な試みだ。
左/貴志真生也「リトル・ヘラクレス 2」 (2010) 右/根来 瓶子(室町時代)
白金アートコンプレックス(東京・港区)は、1階から4階まで各フロアに現代アートと古美術のギャラリーが、5階は建築設計事務所および文化財団事務所が入っているビルだ。これまで各ギャラリーで開催する展覧会のオープニングをいっせいに行う「合同オープニング」は何度も実施したことはあったが、全フロアで1つの展覧会を開くというのは初めての試みとなる。
本展は同ビルの2周年を記念して企画された。キュレーターとして招かれた美術史家・明治学院大学教授である山下裕二氏が「シャッフル」というタイトルを決め、フロアごとに「エレメント」「カオス」「エナジー」「ユニバース」「ヘブン」という5つのテーマを割り振った。各ギャラリーはお題に合わせて、所属作家の作品を展示する。
▲田名網敬一「KANNOOON」(2009)Photo by Keizo Kioku
例えば1階の児玉画廊は、貴志真生也の立体作品の上に、4階のロンドンギャラリー所蔵の室町時代の根来塗りの盆が載せられた。一方、ロンドンギャラリーでは長谷川等伯の屏風(桃山時代)に、本堀雄二(ナンヅカアンダーグラウンド)による段ボールの仏像を合わせた。また、5階の新素材研究所と榊田倫之建築設計事務所も参加し、土曜日のみのオープンながら美術家の杉本博司氏の作品などを展示している。
▲長谷川等伯筆「四季柳図屏風」
展示のなかで特に新鮮に感じられたのは、ロンドンギャラリーによる日本の古美術だ。勢いある現代アートに囲まれながらも埋もれることなく、むしろ見事な調和を見せているのは、古美術の持つ懐の深さなのだろうか。
山本現代(3階)のオーナーである山本裕子さんは今回の取り組みについて、このようにコメントする。「私たちは”エナジー”というお題をもとに、ロンドンギャラリーからお借りした鎌倉時代の仏画『愛染明王像』をメインにして、赤い色の作品を組み合わせました。他ギャラリーの作家や作品について熟知しているわけではありませんから、1つの作品のライティングを決めるのに2日かかるなど苦労もありましたが、逆に別フロアで展示されている所属作家の作品が新鮮に見えるなど、ギャラリー側にとっても有意義な試みでした」。
▲小谷元彦「No. 44」(2010)
時代やジャンルを超え、新旧の日本の美術を融合させることで、ギャラリーにとっても来場者にとっても既存の価値観や知識を揺さぶり、新しい視点を与えるという狙いがあるようだ。(文/今村玲子)
「シャッフル」
会 期:2011年4月2日(土)〜4月30日(土)
開廊時間:11:00〜19:00
休 館 日 :日月祝休廊(新素材研究所/榊田倫之建築設計事務所は、毎土曜日のみ公開)
会 場:白金アートコンプレックス
1階:児玉画廊
TEL: 03-5449-1559
2階:NANZUKA UNDERGROUND(ナンヅカアンダーグラウンド)
TEL: 03-6459-3130
3階:山本現代
TEL: 03-6383-0626
4階:London Gallery(ロンドンギャラリー)
TEL: 03-6459-3308
5階:新素材研究所、榊田倫之建築設計事務所
TEL: 03-5422-9736
今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。『AXIS』のほか『リアル・デザイン』『ブラン』(えい出版社)などをメインに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。