電動歯ブラシの「あったらいいなぁ・・・」なデザインを考える


「あったらいいなぁ・・・」の6回目は「電動歯ブラシ」。

ストーリーとプロダクトのデザインを手がけるサカイデザインアソシエイツの酒井俊彦さんは、“かにかま”がカニに近づこうとしているように、電動歯ブラシを歯ブラシに近い存在に変えようとしている。これまで電動歯ブラシと歯ブラシは使い方の違いもあり、まったくの別モノだと思っていたので、この考え方はとても新鮮に映った。朝は普通の歯ブラシで、昼はパナソニックの「ポケットドルツ」という使い分けに慣れが必要だったためで、しかし近い存在になれば自ずと他の洗面器具と馴染むことができるに違いない。

さて、今回は、「あったらいいなぁ・・・」のモデリングとCGを手がけているモノグラフアーツの 黒田克史さんと大塚聡さんに話を聞いた。

▲写真左が大塚聡さん、右が黒田克史さん

ふたりは法政大学大学院システムデザイン研究科システムデザイン専攻を修めた同窓生であり、酒井さんの教え子でもある。毎回、酒井さんから届くスケッチをもとに大塚さんがモデリングを手がけ、黒田さんがプロダクトの質感やライティングの光などを加えていくそうだ。ときには酒井さんから「素材感が違う。プラスチックのようではなく陶器のような質感に」といった指示が入り、光の反射や映り込みを修整したりするという。

ふたりが自らの強みを、「CADがなくとも、手描きのラフスケッチから、3DCGを起こすことができる」というように、単にそれらのソフトを使いこなせるというだけでなく、デザイナーである点が他者との大きな違いだ。三面図に描かれていない部分も、同じデザイナーならばイメージを膨らませて、細部にわたって表現することができるからだ。

モノグラフアーツは、黒田さん、大塚さんに、同大学システムデザイン学科での同窓生である武内康次さんを加えた3人で立ち上げたスタジオであり、「CGからウェブサイトまでのコミュニケーションデザインを一貫して手がけられることが強み」と語る。広い意味でのコミュニケーションを担おうとする彼らは、3人揃って芸術系ではなく工学系のデザイン大学出身ゆえ、システムやエンジニアリングへの関心が高く、これらの分野に自らのデザインを生かしたいと考えている。プロダクトデザインも手がけたいと語るが、それは、従来型のプロダクトデザインに特化したあり方ではなく、より広い意味でのデザイナーの姿を模索しているようだ。「あったらいいなぁ・・・」では、彼らのモデリングやCG映像にもぜひ注目ください。