サカイデザインアソシエイツの酒井俊彦さんが、「あったらいいなぁ……」というタイトルで始めたプロジェクトをご存知でしょうか? 昨年10月にスタートし、月1回、酒井さん自身が「あったらいいなぁ……」と思うプロダクトをマンガとCGにして発信しています。
今回紹介するのは、その連載の5回目、「デスクライト」。
「リビングにはダイニングテーブルとコーヒーテーブルしかない」という酒井家。そこで書き物をしたり読み物をしようとすると、ちょっと明るさが足りない。けれど、書斎で使うようなスタンドライトを持ち込むと、空間に馴染まなかったり、またライト自体のベースが重かったり大きかったりしてして、そもそも動かしにくい……。
たくさんの、美しいデスクライトは存在するけれど、普段はフロアスタンドもしくは常備灯として使え、必要なときだけデスクライトとして容易に移動可能なもの。そんな提案を形にしています。
▲酒井俊彦さんと第4回「冷蔵庫」の絵コンテ
酒井さんがこのプロジェクトを始めたとき、「タイトルどおり、あたらいいなぁ……と思えるデザインのお話です。でもこれは、ごくごく個人的にそう思えるデザインという意味です。日本のデザインがこうなるべきだ!とかいう類いの話ではありません」と前置きしているように、必要に迫られて何かを買おうとしたとき、欲しいと思えるデザインがなく途方に暮れたという自らの経験に端を発している。
だから、第2回の「ガスコンロ」で「築40年くらいの古くてかわいい家に似合うものがない」というふうにシチュエーションや要望がとても具体的だ。
「日常業務ではマーケティングやリサーチをベースとしたプロジェクトが多いけれど、マスマーケット向けの製品にも、もう少しパーソナルな思いから出発したプロダクトがあってもいいのでは」と酒井さんは言う。それは、マーケティングやリサーチを否定しているわけではなく、回答やデータの読み取りの難しさを経験としてよく知っているからだろう。
ところで、このプロジェクトは、酒井さんがストーリーとデザインを手がけ、サカイデザインアソシエイツのスタッフがマンガを描き、酒井さんの教え子であり、今は独立して活動するモノグラフアーツがモデリングとCGを手がけている。
可動モデルを製作したのかと勘違いしそうなリアルなCGに驚き、また、ガンダムみたいなロボットに変身する掃除機や、今にもロケットのように発射しそうな電動シェーバーなど、思わず笑ってしまう指摘が盛り込まれている。そのうえでモールディングにも配慮し、どれも実現不可能なプロダクトとしてまとめ上げている。
とかく生真面目な提案が多いデザインの世界に、ユーモアをまじえつつ、等身大の暮らしを描いている点が、とにかく新鮮だ。
●「あったらいいなぁ……」は、今後も、10日をめどに毎月アップしていきます。ご期待ください。
●過去のシリーズをまだご覧になっていない方は、下記へ。
vol.01 掃除機
vol.02 ガスコンロ
vol.03 電動シェーバー
vol.04 冷蔵庫