メモリカードの規格は、とりあえずSDカード系に収束しそうだが、以前はさまざまな規格が乱立し、それに応じてメモリカードリーダーのスロットも増えていった。
しかし、あるとき、1つのスロットだけでほとんどのメモリカードに対応できるカードリーダー製品が登場した。そのときに筆者は、これをデジタルカメラに組み込めば、汎用的で、旅行先などでもカードの買い足しに困らない製品ができるのではないかと考えた。
実際のところ、今ではメモリカードの容量が増え、しかも価格が下がっているので、大容量タイプのものを1枚購入しておけば事足りてしまい、短期の旅行などでも困らない。したがって、そうしたユニバーサルメモリスロットを内蔵する意味は薄れたものの、ジャン・エウン・パークがデザインした「UCIMカメラ」のコンセプトを見て、今ならこのほうがエレガントに問題を解決できると感じたのである。
UCIMカメラは、市販のUSBメモリをストレージに利用するデジタルカメラ製品だ。最近では、学生でも1つか2つのUSBメモリを持ち歩く時代なので、それを挿すだけで記憶媒体として利用できるならば有用性が高い。しかも、コンピュータへのデータ転送も簡単に行える。
さらに、UCIMカメラに複数のUSBポートがあるのは、一度に複数のUSBメモリにイメージを保存できるようにするためだ。そのおかげで、たとえば少人数のグループ旅行などで記念撮影を行うようなときでも、その場で写真データを分配して持ち帰ることが可能となる。
UCIMカメラは、リアルな世界でのソーシャルコミュニケーションをサポートするデジタルカメラだと言えるだろう。
大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。近著は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)など。