パリにて開催中、メゾン・エ・オブジェの続報です。

メゾン・エ・オブジェも、開催3日目です。広大な展示スペースで見逃しているところはないかと会場を回っていると、深澤直人さんがデザインを手がけていることで知られる大直の「SIWA・紙和」ブースを発見。新作のトートバッグ類などと並んで、試作品という服のシリーズが本邦初公開として紹介されていました。

▲ 「SIWA・紙和」の新作となるベストやコート。3度ほど洗いをかけて使用される紙素材は高い強度をほこります。コートの予定価格は4万円ほどだそうです。

展示されたアイテムは、コートに加え、襟付き・襟なしのダウンベストという計3型。ちょうどパリの街は2011年秋冬メンズコレクションの真っ最中ですが、こちらも冬場の着回しに活躍してくれそうな印象です。再生ポリエステルから生まれた独特の風合いを持つ素材は、環境のみならず、着心地や保温性などの面において身体にも優しいことがうかがえます。春頃には東京でも正式発表される予定とのこと。今後の展開も含めて期待したいものです。

▲ 今回で3回目となる「パリ・デ・シェフ」に日本から初めて参加した成澤由浩シェフ(写真右)とコラムニストの中村孝則さん。

環境配慮は今やものづくりにおいて当然の認識となりつつあります。そして、メゾン・エ・オブジェの会場でも、こうした新たな常識をデザインへ昇華させた試みが多数散見できます。「パリ・デ・シェフ」というライブデモンストレーションの2日目に登壇した東京・南青山の「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」シェフ成澤由浩さんとコラムニストとして活躍する中村孝則さんによるセッションも、環境への眼差しを強く訴える先見的な試みで、聴衆の心を惹き付けていました。

この日披露されたのは、「テロワール(大地)」をテーマとした成澤シェフのスペシャリテ。真っ黒い「土のスープ」や、木(杉・ナラ)の削り節で出し汁を採る仕込みのプロセスなど、五感を刺激する大胆な発想の数々に、いったいどんな味がするのかと、詰めかけた人たちは皆興味津々の様子。イベント終了後に、栗の木の粉を混ぜたクッキーとともに試食をする機会がありましたが、ほんのりと木の香りがする「森のだし」も、土のスープも、想像以上に美味しくいただけました。

▲ 日本の削り節から発想された「森のだし」には、うっすらと木の香りが漂う。実は、樽発酵を行う蒸留酒などでも、人は同様に木の香りを味覚の一部として取り込んでいると成澤シェフ。

「口に入れると人はいっそう注意を払うようになる」という成澤シェフの発言にもあったように、この料理に触れれば、森林資源の現象や環境問題への意識は自ずと高まることでしょう。地球が健康であることで、その上で暮らす私たちも健康でいられるという当たり前のことを気づかされたイベント。来てよかったなとの思いを強くしながら、ホール会場を後にしました。パリ・デ・シェフは、24日(月)が最終日となっています。

▲ これも環境配慮の一貫? 照明メーカーのブースにて人形が自転車のペダルを漕ぎ、自家発電を行っています。