SIDE 01
「chair+(チェアプラス)」展に見る、椅子を題材にしたデザイナーからのメッセージ

デザイナー、建築家、編集者、ライター、プロデューサーで結成されたグループ「SIDE」による展覧会がスタートした。ディレクターと会場構成は、寺田尚樹と藤森泰司が務めており、それぞれの作品である椅子とその制作意図が、シンプルながら効果的な会場構成によって、端的に来場者に語りかけてくるようだ。

▲会場を訪れていた川上元美さんと、出展者の寺田尚樹さん(右)。寺田さんの作品名は「1/1マスターピースオブファニチャーシリーズ No.1」

▲萩原 修さんのブースは「デザインの対話」を意図。右手は若杉浩一さんの展示

▲若杉浩一さんのパネルには「CHOITO IPPAI(ちょいと一杯)」

「chair+」展に参加しているSIDE 01のメンバーは、粟辻美早、五十嵐久枝、内田みえ、小泉 誠、寺田尚樹、長町美和子、萩原 修、藤森泰司、村澤一晃、若杉浩一。粟辻、内田、長町は、展覧会用の冊子を制作しているが、それほかの7人は各々ブースを構え、新作の椅子を発表している。藤森がアキッレ・カスティリオーニの照明器具「ジビジャーナ」を例に挙げて、「使われるシーンを明確に描いてデザインされたものが、逆に、特定のシーンを超えていく強さと広がり、可能性を持つ」と言うとおり、使うシーンを描いてデザインされた椅子ばかりだが、その解釈の仕方は各人さまざまだ。

▲左手から、川上元美さん、出展者の村澤一晃さん、長町美和子さん。村澤さんの作品名は「TOIRO(十色)」

▲文/長町美和子、デザイン/粟辻美早、編集/内田みえによる『chair+本』。書体もフォーマットも出展者ごとに違う凝ったつくりで、会場にて販売中

日頃の仕事でも椅子、もしくは家具を手がけるメンバーばかりのなか、正直、クライアントのある日常業務とどのように違う椅子が展示されるのだろうと思っていた。製品デザインにおいて、自らの考えを十二分に発揮している、実績のあるクリエイターたちだからという点と、彼らがグループとして活動し発表することに、どのような意図があるのだろうかと思っていたからだ。

▲五十嵐久枝さんによる、ベッドサイド用の椅子であり、ものを置ける小さな台。背面の光は、会場で実物を見てのお楽しみ

しかし、今回の展示は、椅子のデザインだけを発表しているのではなく、その意図をパネルに添えた文章やスケッチで解き明かすことによって、自分たちの考えるデザインとはこういうもの、暮らし、人とのつながりはこうあってほしい、というメッセージのほうが強く打ち出されているように感じられる。

▲しっかり腰掛けるのではなく、ちょっと慌ただしい朝のための椅子をつくった藤森泰司さん

会場には「早く製品化してほしい」と思える椅子がいくつもあり、「chair+」展の今後の展開にも期待したい。

展覧会は、12月19日(日)11:00〜20:00(最終日は17:00)までで、場所は東京・六本木のAXISギャラリー。16日(木)19:00〜20:30には、公開討論会も予定されている(開催終了)。

▲「“誰かとコミュニケーションして、誰かのためになる”ってのがデザインだと思っているから」と書かれた小泉 誠さんのブース。別パーツをプラスすることで学校用の木製椅子を再生する