某大手ランプメーカーが120年続いた白熱球の一部生産中止を発表してからというもの、LEDを使った照明プランを提案してほしいというオーダーがひじょうに多くなりました。
LEDの照度や演色性も日進月歩でどんどん良くなり、住宅だけでなく飲食店のプランでもそれなりに対応できるレベルにまで追いついてきたように感じます。二酸化炭素排出量を抑えるLEDは環境を考えるうえでは確かに注目すべき存在。しかし本当の意味で白熱球の代替となり得るのでしょうか?
私自身は白熱電球の持つ暖かさや雰囲気が好きで、自宅では白熱電球を多く使用しています。それは、照明プランナーとしてのこだわりでもありますが、結局は、「いい灯かりの中で生活したいから」です。とは言え、電気代が気がかりなのも事実。ワット数の小さい電球に換えてみたり、明るく感じる透明タイプの電球にしたり、調光器を使うなどの工夫をしています。調光器につなぎ、出力を下げると寿命が倍以上伸びることや、ワット数を下げると省エネになることなど、一般にはあまり知られていないように感じます。
先日、家電量販店の電球売り場に白熱球を買いに行ったときのこと。驚くほどの種類のLED電球が並ぶなか、白熱球は隅っこのほうでどこか申し訳なさそうに売られていました。販売員はお客さんに相談され、「ダイニングでしたらこちらのLED電球がおすすめですよ」「〇年使えばコレだけ電気代に差がでますよ」などなど……、照明プランニングのうえでは首をひねる部分もあれど、照明の専門家並の知識とプレゼンだなぁと傍で聞いていました。彼らのLEDに対する知識については関心するものの、それをどう使えば効果的か、いかに雰囲気のある空間をつくることができるか、という説明まではできません。しかし、照明は“設備”という与えられた使命のほかに、空間を決定づける重要なファクターでもあります。LEDでは白熱球のように“灯すような”暖かい雰囲気はつくり出せません。
環境を考えるうえでLEDは必要不可欠で注目すべきデバイスだとは思いますが、照明器具をただの設備ではなく、空間の雰囲気をつくる要素でもあると考える以上、LEDはまだまだ本当の意味でオルタナティブな存在にはなり得ない、と今はつくづく感じるのです。(文/マックスレイ 照明プランナー 永富裕幸 )
この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。