NEWS | ファッション
2010.04.09 21:06
ヘミングウェイの流儀
今村楯夫、山口 淳 著(日本経済新聞出版社 1,890円)
アーネスト・ヘミングウェイが遺した写真1万点以上、領収書数百点、手紙、伝記、作品など膨大な資料を吟味したうえで、ヘミングウェイが私生活で身に着けたもの、愛用したものを紹介する本書。視点の異なるふたりの著者によって、もの側からも、作品・人物像側からも読み解ける、貴重な一冊になっている。
著者ひとりである山口 淳氏によれば、「研究者の間では、ヘミングウェイは洋服にも無頓着で、モノにもこだわらなかったというのがほぼ定説化しているのですが、本書ではその定説を覆し、いかにヘミングウェイが服装にもモノにも独自のこだわりを持っていたか、またそれらが作品にどのように生かされていたかなどを解き明かしていきます」とのこと。
実際、目次を開くと、このようなアイテムと言葉が目に飛び込んでくる。
・下着をはくことが私にはフォーマルなのだ/ショーツ
・Tシャツは立派なアウターだ
・キャパとパパとトレンチコート
・行きつけの店、アバクロンビー&フィッチ
・船上のドレスコード
・第一稿は2Bの鉛筆で書く
・鼻パッドのノンシャラン!/眼鏡
・行動派の作家にはバブルバックがよく似合う/腕時計
・渓流で、海で、ハーディーとともに/釣り道具
……などなど。目次を見るだけで、当時のアメリカン・カジュアルウェアを思い浮かべたり、作品名が頭をよぎったりと、想像が膨らむ。
なお、監修と執筆を担当している今村楯夫氏は、東京女子大学の教授でもある、日本のヘミングウェイ研究の第一人者。山口 淳氏は、ファッション誌、旅行雑誌、モノ雑誌の編集者でありライター。本書では構成と執筆を担当している。ふんだんに盛り込まれた写真も見応え十分だ。四六判、232ページ。