「レープクーヘンハウス」が社会を映す
ドイツの伝統焼き菓子の建築コンテスト

レープクーヘンハウスの原型。『ヘンゼルとグレーテル』の魔女のお菓子の家。

ドイツの子供たちが建築家気分を初めて味わうのは、クリスマスの季節に甘くて美味しそうなレープクーヘンハウスをお母さんと一緒につくるときかもしれません。一般的なレープクーヘンハウスは『ヘンゼルとグレーテル』の魔女が住むお菓子の家のようですが、プロの建築家が設計した“現代建築レープクーヘンハウス”もいろいろとあるのです。

コープ・ヒンメルブラウ設計のチョコレートをかけたレープクーヘンハウス。

南ドイツ新聞のクリスマス企画で、ウィーンのコープ・ヒンメルブラウやベルリンのグラフト、ザウアーブルッフ・ハットンといった著名な建築家が設計したレープクーヘンハウスがその設計図とともに公開されたこともありました。

グラフト設計の菓子とシュガークリームの積層レープクーヘンハウス。

ザウアーブルッフ・ハットン設計のカラフルなシュガーコーティングのレープクーヘンハウス。

土台、壁、屋根の建材となるレープクーヘンは、ドイツのクリスマスに欠かせない伝統焼き菓子。基本的なレープクーヘン生地の材料は小麦粉500g、蜂蜜250g、砂糖とバターがそれぞれ125g、卵1個、ココア大さじ1杯にベーキングパウダー、そしてレープクーヘン・スパイスが味の決め手です。この独特の香辛料はコリアンダー、オールスパイス、クローブ、シナモン、アニス、カルダモン、ジンジャー、フェンネル、ナツメグの9種類がミックスされています。

シュトゥットガルトの「EAT ART」コンテストの2008年度優勝作品。d3建築事務所のドリス・コルマンが「世界的経済危機を突破する力を養う公衆便所」をデザイン。

毎年クリスマスが近づくとレープクーヘンハウスの建築コンテストがいろいろな都市で開かれます。シュトゥットガルトでは「EAT ART」と題され、審査員のひとりは、メルセデス・ベンツの元チーフデザイナーで現デザインカウンシル会長のペーター・プファイファー教授。

ミュンヘンでは「サンタクロース株式会社のコーポレートアーキテクチャー」をテーマにコンテストが開かれたことがあります。展覧会と表彰式の後で作品はオークションにかけられました。売上げはミュンヘンのホームレスに無料で食事配給すをる慈善団体に寄付というように、アイデアもクリスマスに相応しく暖かいものでした。以下は、その2007年の出品作品の数々です。(文/小町英恵)

Photos by Moritz Verlag, SZMagazin, DETAIL & 3d

この連載コラム「クリエイティブ・ドイチュラント」では、ハノーファー在住の文化ジャーナリスト&フォトグラファー、小町英恵さんに分野を限らずデザイン、建築、工芸、アートなど、さまざまな話題を提供いただきます。