REPORT | デザイン誌「AXIS」
2009.08.21 21:31
Photos by Yoshiaki Tsutsui
長身の髭面で、眼鏡の奥の温和で知的な瞳はいつも変わらず。AXIS76号(1998年11・12月)の表紙に登場いただいたのは、プロダクトデザイナーでIDEOの創設者のひとりでもある「ビル・モグリッジ Bill Moggridge」氏。
「インタラクションデザイン」という言葉の生みの親と言われるモグリッジ氏が常に唱えてきたのは、人とモノ、人と技術をいかにつなぐかということ。“経験のデザイン”についてもいち早く語っていました。
「Design the whole experienceという言葉がありますが、ユーザーの経験のすべてをデザインしなければいけないという考え方です」
「経験のデザインとは、五感に向けてデザインするということ。例えばお茶を飲むとき。まずカップが美しいかを見る。………口に近づけるとだんだんいい香りがしてくる………カップを皿に戻すときの両者の触れ合う音がいい。これら一部始終を通して初めてお茶がおいしいと感じるのです」
「ユーザーオブザーベーションでは、実際のユーザーや、潜在的なユーザーを観察し、特徴的なキャラクターをピックアップして、ユーザーのプロフィールをつくり上げていきます。私の頭の中には何人もの架空の人物がいます。例えばミネソタにひとりのおばあさんがいて………。デザインするときには彼らを思い浮かべるのです。最近加わった人物にグリーンガールというのがいます。環境に対する意識がひじょうに高い女性です」
「これからはデザインと機能がもっと融合していくのではないかと思います」
モグリッジ氏が2006年に発表したのが、インタラクションデザインの歴史をまとめた名著『Designing Interactions』。ぜひ読んでおきたい1冊。
ビル・モグリッジ/1943年イギリス・ロンドン生まれ。69年ロンドンでID TWOを設立、デザインコンサルタントとしてスタートする。79年にサンフランシスコ・ベイエリアを第2の拠点として北米とアジアの企業向けにサービスを展開。91年、他の2社と合併し、IDEOを設立。数々の革新的なデザインと独自のデザインアプローチで、IDEOを世界的なデザイン会社へと育てる。デザイン教育にも意欲的に携わっている。