Photos by Makoto Fujii
魚が泳ぐ“いけす”に見立てた、コンテンツ視聴システムのプロトタイプ。写真は2次元的に水槽を模した音楽プレーヤーの様子である。
大量の音楽をデジタルデータとして所有する時代には、人間の自然な行為をデザインに取り入れることが有効になる。例えば、CDジャケットを手がかりに音楽を選ぶという行動がある。これをヒントに、曲を1枚のグラフィックの入った小さな円として表現。画面の中を左から右へ泳ぐように回遊している。ユーザーは気になる曲を見つけたら、それをペンでつかまえ、中央の大きな円(いけす)の中に放り込んで再生。再生頻度の高い曲はずっと置いておけるほか、ランダムに泳いできた曲がその中に混入することで、マンネリなプレイリストとなるのを防ぐこともできる。
いけすの入口と出口は、自由な大きさに開け閉めが可能だ。能動的に曲を集めたい場合、複数の条件(音楽ジャンル、過去に再生した日付と回数など)と、その掛け合わせによる検索ができる。検索用のいけすが現れると、まるでエサに集まる魚のように、該当の曲が吸い寄せられる。
気分や状況によって時々刻々と変化する「今、聴きたい曲」を、気持ちよく選んで聴くことのできるかたちを目指している。(AXIS 123号 特集「21世紀のID」より)