先端のメディア技術を活用し、
「空気」を伝えるプロジェクトが進行中

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アーティストの鈴木康広さんと東大の研究者らが協働し、メディアアートの新しいかたちを目指すデジタルパブリックアートプロジェクトが、今秋に羽田空港を使って大規模な展示を行うという。

5月29日、30日に行われた東大先端研のオープンキャンパスで、作品の1つが披露された。2007年に青山のスパイラルガーデンで発表した鈴木さんの作品「木陰のスクリーン」の進化版となる。

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上空を見上げているのが、作者の鈴木康広さん。

台座となるソファー部に腰掛け、上を見上げると、スクリーンの役割を担う回転したプロペラから、鳥の映像が放たれるという仕組みは、網膜の残像現象を応用した視覚表現であるゾートロープやおどろきばんなどにも通じている。その意味では決して先端テクノロジーを発想のよりどころにしているわけではなく、そこがミソでもある。

空港ロビーを訪れた人は、自分が搭乗する飛行機の発着状態を、投影された鳥のしぐさから知ることができる。自分の鳥が飛び立つと、それは出発時刻が近づいていることのアナウンスとなる。こうしたささやかな案内であれば、セキュリティーゲートに向かう歩も、どこかゆったりと優雅なものになりそうだ。

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10月9日から1カ月近くにわたり、空港内の随所にこうした作品が置かれ、新しい気づきや出会いを誘発することとなる。空港に向かう楽しみが増えるのは間違いない。

ロンドンのターミナル5のように(こちらの記事は本誌137号でレポート)、ぜひとも常設を期待したいプロジェクトだ。詳細は、7月1日発売(140号)の特集記事に詳しいので、ぜひともチェックを。プロジェクトリーダーを務める東大の廣瀬通考教授と鈴木さんの声を紹介している。