特集
デザインを拡張するテクノロジー
新たな産業革命の概念として、2021年に欧州委員会は「インダストリー5.0」という概念を提唱しました。これは「インダストリー4.0」で劇的に進化したAIやIoTといったテクノロジーを背景に、より「人間中心」で「持続可能」な産業を目指すムーブメントを指します。今やテクノロジーの内実そのものが問われるのではなく、それら技術をどう活用するかが重要であり、ひとつひとつの選択が産業や社会の構造を一変させる、そんな時代に私たちは生きています。デザインについても同じことが言えると思います。もはやテクノロジーがデザインを拡張するのは自明のことであり、問題となるのはそこで拡張されたデザインにはいったい何が残り、そして何ができるのかということ。本特集ではさまざまなケースを通して、「デザインメテクノロジー」の真の効用を探ります。
Vol.230 | 2024年10月01日 発売 |
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定価: | 2,500円 |
表紙: | ロナン・ブルレック |
016
COVER STORY
ロナン・ブルレック
彼の名を知らしめたのは、2000年代初頭にカッペリーニ、マジス、ヴィトラといった世界のトップブランドから発表された数々の家具がきっかけだろう。日々の暮らしに用いる小さなプロダクトから公共空間のプロジェクトまで幅広く手がけ、常に実験的な作品に取り組むことも特徴だ。長年デザイン界を牽引してきたロナン・ブルレックが弟のエルワンとスタジオを分け、今後はソロ活動に専念するという。1本1本の線をフェルトペンで描いたドローイングや陶板作品といったアーティストとしての活動にも力を入れるロナンに今改めて聞いた。
032
Apple Vision Proはデザイナーの仕事をどのように拡張するのか。
2024年時点で手に入るテクノロジーで最も未来を感じさせるものと言えば、真っ先に名前が挙がるのが生成AIとApple Vision Proだろう。後者は60万円とAR/VRゴーグルのなかでも最も高価な部類だが、最先端テクノロジーを凝縮し、それに見合う品質と体験を提供していると評判だ。「空間コンピューティング」と呼ぶ新しいデジタル作業のスタイルの確立に向けて、アプリ開発者がこの体験をどのような点に注意して、どのように設計すべきかを示したビューマンインターフェイスガイドラインも整備されている辺りはさすがアップルと言えよう。
038
3Dプリンターと手仕事をフュージョンするークラフトルーション
ビヨンセ、レディ・ガガ、ビョークといった歌姫たちが愛するオートクチュールと聞くと、私たちとは縁遠い世界に聞こえるかもしれない。しかし、イリス・ヴァン・ヘルペンは、3Dプリンターをはじめとするテクノロジーと伝統的な職人技を駆使する「クラフトルーション」をコンセプトに掲げ、新しい服飾のあり方を創造し続けるオランダ人デザイナーだ。
044
テクノロジーのぬくもりが生むデジタルデバイスの新基準
スマートフォンやワイヤレスイヤホンのデザインが、まるで「設数進化」を経たかのように代わり映えのないものになるにつれ、デジタルデバイスの差は、機能の多身やスペックの違いによるところが大きくなっている。そんな風潮のなかで、ロンドンに拠点を置くデジタル製品ブランド「Nothing(ナッシング)」が生み出すプロダクトは、先鋭的でありながら、どこか親しみやすさを感じさせる。ユーザーとデバイスの関係性の再構築に取り組む同社独自のフィロソフィーを詳しく取材した。
050
DIGRAPHが追求する、視覚表現の未来
DIGRAPH(ディグラフ)は、デザイナーでグラフィックリサーチャー(視覚表現研究者)の深地宏昌と、プログラマーでアルゴリズミックデザイナーの堀川淳一郎が2023年に結成したクリエイティブスタジオ。彼らはデジタルテクノロジーを駆使し、多様な領域を横断しながらグラフィック表現の新たな可能性を探求している。彼らが目指すものとは何か。
056
テルアートの内側とは? 知的好奇心、信頼、プラス思考が生み出す体験創造
オランダのアムステルダムに拠点を持ち、世界各地で活躍するテルアートは、新興テクノロジーを用いた没入体験を創造するエクスペリエンスデザインスタジオだ。グーグル、トヨタを含む世界企業、ドバイの未来博物館、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館といった文化施設をクライアントに持ち、万博、オリンピック、世界経済フォーラム、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの国際的な場でインスタレーションを展開。CEOのポール、スキナーとデザインディレクターのピム・シュハットシャベルに、テルアートの視点と手法について聞いた。
062
対談 隈研吾×レイ・イナモト
めまぐるしく変化していくテクノロジーは、建築やデザインにどのような影響を及ぼしていくのだろうか。世界50カ国で400ほどのプロジェクトが進行している建築家・隈研吾と、グローバル企業のブランディングなど、ニューヨークを拠点に活動するクリエイティブディレクターのレイ・イナモトが、デザインとテクノロジーの未来を展望する。
069
「技術との距離感」が街に幸福をもたらす 未来のショーケース「SXSW」から生成した都市
テクノロジーの発達が都市の発展を促し、そこで生活を営む人々の幸福度を上げる。人々が集まって暮らし始めた有史以来、都市開発と技術革新は密接な関係だった。だが、幸せをもたらすはずの最新技術が、近年は生活のしにくさ、生き生きとした光景の喪失につながる例もある。そこに何が欠けているのか。未来予報社のフューチャリストでSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)の日本窓口も務める宮川麻衣子氏と考えた。
130
第2特集
機能と豊かさのアウトドアデザイン
コロナ禍、急速に人気に火がついたアウトドア。ブームが落ち着いた今、アウトドアのデザインは一過性のものではなく、生活に根差しだしたように見えます。過酷な環境にも耐えうる服の日常着化、風雨に強く外でも使える家具の展開、機能性に優れた道具の日用品化。内と外、都市と自然の境界がなくなることは、自然のなかで研ぎ澄まされた、もの本来の機能の見直し、必要最小限のものだけを所有する豊かさへの気づきかもしれません。気候変動を前に、環境への配慮が求められる今、自然と常に向き合うアウトドアシーンのデザインに着目します。
132
第2特集
都市と自然を行き来して見つめる、本当に必要なものとは?
140
第2特集
有念を貫き、美を追求する気鋭のブランド「ゼインアーツ」
144
第2特集
建築家がつくる山岳テント「マウンテン・ギア・プロジェクト」
148
第2特集
アウトドアが与える新たな食の視点
152
第2特集
アウトドアの機能は時代に求められているーアンドワンダーが見据えるものづくり
156
第2特集
制約が生むサステナブルな山岳建築
114
スコープ
MIDビル— 戦前からの人脈息づく前川國男のモダニズム建築
122
スコープ
リアルなアーカイブから辿る: チャールズ&レイ・イームズの創造の軌跡
002
Ambience 気配
野口里佳
075
LEADERS
今和泉隆行(空想地図作家・地理人)
082
Global Creators Labs
スタジオ・アザー・スペース
092
Sci-Tech File
森のキノコが教えてくれる菌根という知られざる共生のかたち
098
ひとつのピースから
Radio in a Bag(1981)
102
アフリカの実践者たち
マリアム・イスフ(建築家)
108
EYES ON K-DESIGN
韓国のデザイン教育を牽引するID KAIST
164
深津貴之の「行ったり来たり」記
特殊用途自動車
170
意思決定のデザイン
ビジョンの重要性/よりよい意思決定は個の意思を発動する
174
太古のクリエイティビティ
文明のかたち
180
詩的工学演習
表現とエンジニアリング
182
視点モノローグ
利己
184
はじまりのはじまり
おやすみ矢印
186
クリエイターズナビ
ウーゴ・ガットーニ、シュ・ユコウ(朱禹豪)、光井 花、左右田智美、井出健一郎
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